“ラスボス”イランのイスラエル攻撃に「2つの狙い」 報復連鎖で“第5次中東戦争”懸念も
イランがイスラエルに対し、報復として史上初めてとなる直接攻撃を実施した。今後、第5次中東戦争に発展するのではと懸念する声もあり、国際社会は緊迫化する中東情勢を注視している。 【画像】イスラエル軍の発表によると、レバノンやイエメンなど全方位からイスラエルを包囲するように攻撃が行われたという。
“武装勢力の後ろ盾”イランがイスラエルを攻撃
光を放ち、何発も空へと発射されるミサイル。イラン政府は、4月13日にイスラエルへ向けて攻撃を開始する様子を捉えた映像を公開した。 イランは13日から14日にかけて、イスラエルに対し300以上の無人機やミサイルによる大規模攻撃を行った。 イスラエル軍は、この攻撃を迎撃ミサイルで応戦。99%の迎撃に成功したと発表した。 一方で、数発の弾道ミサイルが南部の空軍基地に着弾したほか、迎撃ミサイルの破片が10歳の少女に当たり、重傷を負ったという。 この攻撃は4月1日、シリアにあるイラン大使館がイスラエルによるとみられる攻撃を受け、13人が死亡したことへの報復として行われたものだ。今回の大規模攻撃を受け、イランの首都テヘランでは14日、攻撃を祝う祝賀会が開かれた。 バイデン政権はイスラエルの防衛に向けた支援を強調しているが、アメリカ政府高官は、イランへの反撃について「情勢が緊迫化する恐れがあることから、慎重かつ戦略的に考える必要があり、バイデン大統領は、ネタニヤフ首相にそれを伝えた」としている。 また、日本の外務省はイランへの渡航の中止を呼びかけている。
1つ目の狙い「イスラエルの防空能力の確認」
イランはガザ地区のハマス、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派などイスラエルへ攻撃を続ける武装勢力の後ろ盾の存在で、イランはいわば“ラスボス”のような存在だ。 “ラスボス”登場という禁じ手により、中東の緊張状態はさらに一段階高まったといえる。 イランは今回の攻撃について、イスラエルがシリアにあるイラン大使館を空爆したことへの報復だとして、目的は達成したとしている。しかしその裏側には、他にもイランの狙いがあると考えられ、注意してみる必要がある。 1つ目の狙いは「イスラエルの防空能力の確認」だ。 イスラエル軍の発表によると、今回の攻撃は無人機170機、巡航ミサイル30発以上、そして弾道ミサイル120発以上で、合計300発を超える大規模なものだった。 イスラエル軍が作成した攻撃がどういう方向から行われたかという図を見ると、ヒズボラやフーシ派も加わり、レバノンやイエメンなど全方位からイスラエルを包囲するように攻撃が行われていた。 これに対しイスラエル軍は、戦闘機を使うなどして無人機にロックオンし、ミサイルを発射し破壊している。また、エルサレム周辺で住民が撮影した映像には、防空システムで迎撃された無人機、もしくはミサイルが炎を上げながら墜落していく様子が捉えられていた。迎撃にはアメリカやイギリスなどが参加したが、イスラエル軍はイランの攻撃に対し、99%の迎撃に成功したと発表していている。 これはイスラエルの防空能力の高さが示されたもので、イランにとっては衝撃的だったかもしれないが、敵であるイスラエルの能力を確認し、今後どういう攻撃が必要なのかを探る狙いがあったと考えられる。 イスラエルは軍事産業大国でもあり、世界10位の武器輸出を誇る。多方面からドローンや弾道ミサイルが同時に到着するように計算して時間差で攻撃を行う中で、99%を迎撃したことはすごいことだ。