昆夏美・大原櫻子×海宝直人・村井良大『この世界の片隅に』すず役&周作役キャスト座談会 ミュージカル版で大事にしたいこと
現代と地続きの人々の営みを通して、戦争というものを感じてもらう
――演じられる役柄に共感する部分や、ご自身と似ていると思うところがあれば教えてください。 海宝 周作さんは、ちょっと鈍くさいというか(笑)、スッとしてるように見えて、意外と自分の思ったようにはできないところがあって。 村井 良かれと思ってやったことがダメだった、みたいなことが結構ある人だよね。 海宝 そうそう(笑)。普段はすずさんを引っ張ろうって頑張ってるけど、たまに弱さや素直さを見せる、そのバランスが可愛らしいキャラクターだなと思います。その人間臭さ、人間味みたいなところには共感するというか、素敵なところだなあと。 村井 優しいところが可愛らしくもあり残念なところでもあると僕も思います。自分で言うのもなんですが、僕も優し過ぎるところがあるので、そこは似てるなあと思いますね(一同笑)。 大原 すずさんと似てるところかあ、難しいな……。 昆 私は、不器用なところが似ています!(一同笑) 着物を裁ち間違えてしまったりとか、「あちゃー!」みたいなことをすずさんはよくやっていて、分かるなって(笑)。一生懸命やっているのに「あれ? どこで間違えた?」みたいなことが、私もよくあるんです。 大原 すずさんって、柔らかくて温かくて、ちょっとおっちょこちょいなところが可愛らしい人だと思うんですが、私は結構ハッキリした性格なんですね。だから似てるところを探すのは難しいんですが……ホワっとした中にも強さとか明るさ、元気さが感じられる人でもあるので、強いて言うならそういう前向きなところなあと思います。 ――最後に、この作品のテーマについて伺います。言葉で表すのがなかなか難しい作品かとは思いますが、今の時点で皆さんが特に伝えたいこと、大事にしたいと思っていることは? 村井 これは、原作者のこうの先生が仰っていたことなんですが。私は原爆体験者ではないけれど、戦争の話というのは体験者だけが伝えればいいということではなく、我々全員に語る権利と語る義務があるんだと。そのお話を聞いた時、僕らも戦争を体験はしていないけれど、ミュージカルを通して皆様に知っていただくということを、自分たちの義務としてやるべきなんだと、背中を押された気持ちになりました。戦争を前面に押し出した作品ではないですが、戦時中の人々の生活を舞台上で、生身の人間である僕らが演じることで、皆さんに戦争というものを感じていただく機会になるのではないかと思っています。 昆・大原 すごい、全部言ってくれたね。 村井 じゃあもうこれで終わりにする(笑)? ――何かしらトッピングするか、「同意です」のひとことでも大丈夫ですので皆さんもぜひ(笑)。 大原 そうですね~、言葉にするのが本当に難しいのですが……。戦時中の話ではありますが、日々を生きる中での出来事とか苦悩、人間だから思うことというのはいつの時代も同じなんだなって、この作品に触れていると本当に思うんですね。だからすごくシンプルに言うと、「生きるとは何か」というのがテーマなのかなあと。生きるために何かと向き合って、戦って、もがき苦しみながらも前を向いて進むということを、すごく感じさせてくれる作品です。 昆 私は、コレ! という明確なテーマがないというか、簡単にキャッチコピーが付けられないところ、色々な角度から捉えられるところが、この作品の魅力なのかなと感じていて。だから「これを表現したい」と言うことはできないけれど、ひとつ言えるのは、戦争の悲惨さを派手に訴えるのではなく、戦時下にもあった当たり前の日常を淡々と描いているということ。原作がそうだから、このミュージカルも、“戦争を題材にした作品”と聞いて思い浮かべるものとは違う作品になる、ということだけは確信しています。 海宝 ……もうね、ほぼほぼ出尽くしてますけど(笑)。 村井 トッピングお願いします! 海宝 はい(笑)。皆さん仰っていたように、戦争の被害を生々しく描いているわけじゃないのに、戦争にリアリティを感じづらくなっている僕らの世代にも、戦争が生々しく突き刺さってくるのがこの作品。それは、日常が淡々と描かれていて、その日常を送るキャラクターたちに“実在感”があるからだと思います。みんなが自分たちと同じようなことで喜んだり悲しんだりしてるから、自分たちとは価値観の違う時代を生きてた人たちではなく地続きの人たちの話なんだ、そういう当たり前の人間の営みの背景に戦争があったんだ、と思える。僕が原作や映像化作品で感じたそのリアリティを、音楽の力も借りながら、この舞台でも表現できたらいいなと思っています。 取材・文:町田麻子 <公演情報> ミュージカル『この世界の片隅に』 原作:こうの史代 音楽:アンジェラ・アキ 脚本・演出:上田一豪 出演: 浦野すず:昆夏美/大原櫻子(Wキャスト) 北條周作:海宝直人/村井良大(Wキャスト) 白木リン:平野綾/桜井玲香(Wキャスト) 水原哲:小野塚勇人/小林 唯(Wキャスト) 浦野すみ:小向なる 黒村径子:音月桂 白木美貴子 川口竜也 加藤潤一 飯野めぐみ 家塚敦子 伽藍琳 小林遼介 鈴木結加里 高瀬雄史 丹宗立峰 中山昇 般若愛実 東倫太朗 舩山智香子 古川隼大 麦嶋真帆 桑原広佳 澤田杏菜 嶋瀬晴 大村つばき 鞆琉那 増田梨沙 【東京公演】 2024年5月9日(木)~5月30日(木) 会場:日生劇場 【全国ツアー公演】 6月6日(木)~6月9日(日) 北海道公演 札幌文化芸術劇場hitaru 6月15日(土)・16日(日) 岩手公演 トーサイクラシックホール岩手大ホール(岩手県民会館) 6月22日(土)・23日(日) 新潟公演 新潟県民会館大ホール 6月28日(金)~30日(日) 愛知公演 御園座 7月6日(土)・7日(日) 長野公演 まつもと市民芸術館 7月13日(土)・14日(日) 茨城公演 水戸市民会館グロービスホール 7月18日(木)~21日(日) 大阪公演 SkyシアターMBS 7月27日(土)・28日(日) 広島公演 呉信用金庫ホール