大谷翔平ブーからのビーでブンブンブン 蜂が大量襲来で試合開始1時間55分遅れ今季初3三振
◆米大リーグ ダイヤモンドバックス4×―3ドジャース=延長10回=(30日・米アリゾナ州フェニックス=チェースフィールド) ドジャース・大谷翔平投手(29)が30日(日本時間5月1日)、敵地Dバックス戦に「2番・DH」で先発出場。だが、試合開始直前に球場内に蜂が大量発生したことで、試合開始が1時間55分も遅れる珍事が発生した。その影響で珍しく集中力を欠いたか、初回の打席で中前安打を放ったものの、今季初の1試合3三振を喫し、チームも延長10回に逆転サヨナラ負け。4月最終戦を白星で締めくくることはできなかったが、個人としては好成績で新天地の滑り出しを切った。 スーパースターの話題は、昆虫界にまで広まっているのだろうか。大谷見たさか、開閉式の屋根を開けたチェースフィールドのバックネット最上部に蜂が集結。一部観客が避難するなど大騒ぎとなった。前遠征地のトロントでは打席のたびにブーイングを受けた大谷だったが、「ブー」の次は「ビー」の嵐が立ちはだかった。 球場責任者が事態を把握したのは当初の開始予定時刻だった現地午後6時40分の5分前。慌てて駆除業社に電話を入れた。蜂の「bee」にかけてビートルズの「Let It Be」が流れていた球場内の見えないところではドタバタ劇が起きていた。 ここからが映画のような展開だった。球場から車で45分離れた場所にいたのが害虫駆除会社「Blue Sky Pest Control」フェニックス店の支店長、マット・ヒルトンさん。連絡を受けて直行した。現場に着くと、カートに乗ってバックネットまで移動。防護服を着てからクレーンで上昇し、掃除機のような機械で蜂の群れを吸い取った。クレーンで下降していく際には観客から大歓声を浴び、何度も左手でガッツポーズ。観客からは大谷よりも早く「MVPコール」まで受けた。 バックスクリーンに映し出された「THANK YOU BEE GUY」の文字。始球式の“緊急登板”が決まるまで、何もかもが米国らしかった。ヒルトンさんは「(大歓声を受けて)熱くなっちゃった(笑い)。すごい重圧でしたけど、楽しい時間でした」と笑顔。ニューヒーロー誕生を経て、試合は1時間55分遅れで始まった。 蜂の巣をベンチから口を開けて眺めていた大谷は初回に2試合連続安打となる中前打を放ったが、そこから3打席連続三振。1試合3三振は今季初。遅延で集中力が切れていたのか、ブンブンブンとバットが空を切った。同点の延長10回無死一、二塁では元ヤクルトのマクガフから二ゴロ。4試合ぶりの“ハチ号”はお預けとなった。チームは延長10回で今季初のサヨナラ負け。ロバーツ監督も「クレイジーな日だった」とお疲れの様子だった。 新天地での4月を終えた大谷。開幕から自己最悪となる8試合、40打席連続で一発がなかったが、4月終了時点の7本塁打は44発で本塁打王に輝いた昨季と同じペースだ。自己最多タイの月間11度のマルチ安打も記録した。どんな時も「早いところ切り替えて次に臨みたい」と話す大谷は、5月も変わらず打ちまくるだろう。(中村 晃大) 駆除業者大活躍始球式にも登場 〇…蜂の駆除でヒーローとなったヒルトンさんは始球式でノーバウンド投球を披露した。高めにそれたものの「自分は世界一うまく球を投げられる人ではないけど、精いっぱい投げたよ」と胸を張った。この日は6歳の息子のティーボールの試合観戦中に呼び出されたという。「マイナーリーグからメジャーリーグにジャンプして驚いた」と笑い、「(息子は)私が途中で帰ってガッカリしてたでしょうが、問題ないと思う」。きっと自慢のパパとなったはずだ。 ◆メジャーの珍しい遅延・中止 ▼蜂の大群で遅延 最近では2019年5月6日、シンシナティでのレッズ―ジャイアンツ戦で開始が18分遅延。春先の蜂の襲来はメジャーではまれにあり、当地では1976年にも35分遅延があった。 ▼火事で遅延 1993年7月20日、アトランタでのブレーブス―カージナルス戦の試合前に記者席と2階席の一部で火災が起こり、1時間58分遅れで試合が始まった。 ▼球審が急死でノーゲーム 1996年4月1日レッズ―エクスポズの開幕戦、ジョン・マクシェリー球審がプレーボールから7球で昏倒。緊急搬送されるも心不全で急死。ノーゲームで翌日に順延された。 ◆日本国内の珍しい遅延・中止 ▼火山灰で中止 78年7月28日のクラウン―ロッテ(鹿児島県立)で桜島噴火による火山灰がグラウンドに降ってきたため、中止。後日同地で代替開催。 ▼火災発生で遅延 90年9月11日の中日―大洋(ナゴヤ)で、右中間スタンド後方で火災が発生。試合開始が23分遅延。 ▼鳥の襲来で中断 17年8月30日の楽天―西武(Koboパーク)で降雨中断から再開してすぐの8回裏に鳥の大群が襲来。外野を低空飛行したため、33分間中断した。その後再開も、さらに雨が強くなり、8回裏終了で降雨コールドゲームとなった。渡り鳥の襲来による中断は他にも数例ある。 ▼用具到着遅延で開始時刻変更 23年8月11日の楽天―オリックス(楽天モバイル)で、高速道路の事故渋滞による影響で楽天の用具到着が遅れ、18時開始予定が19時45分に変更。試合は同46分に開始した。
報知新聞社