「Hello、brotherまだ寂しい」弟を亡くしたイギリス人作家が震災被災地の「風の電話」へ 亡くなった人に思い届ける電話ボックス
亡き弟へ「風の電話」で思い届ける
ジュリアンさんは2年前の岩手の旅から帰国した直後、深い悲しみに見舞われた。2歳年下の弟で同じ作家として活動していたマークスさんを亡くしたのだ。ジュリアンさんは「自殺しました。彼は3回結婚、3回離婚。怒りの問題があって精神病になってしまった。悲しい・グリーフ・怖さ・怒り・罪悪感。たくさん罪悪感がありますね」と語った。 マークスさんが亡くなった次の日、ジュリアンさんは「あ、風の電話に行かなきゃ」と頭に浮かんだという。「風の電話」は、亡くなった人に思いを届けようと大槌町に設置されている電話ボックスで、ジュリアンさんは被災地を訪れるうち、その存在を知ったのだ。 その「風の電話」を今回の最大の目的地としていたジュリアンさんは、一人の男性に出会った。佐々木格さん(79)、震災の前の年にいとこが亡くなったことをきっかけにこの「風の電話」を設置した人物だ。佐々木さんは、「今生きている方が亡くなった方に思いを届ける、あの世とこの世をつなげるという。どうぞゆっくりとお話してください」とジュリアンさんに語りかけた。 「風の電話」の電話ボックスの中でジュリアンさんは「Hello、brotherまだ寂しい。本当にごめんなさい。僕も最善を尽くしたけど及ばなかった。申し訳ありません。まだまだ愛している。気を付けてね」とマークスさんへ思いを届け、「泣きそう」と言いながら外に出てきた。 どんなことを伝えたかと尋ねると、ジュリアンさんは「いつもありがとうですね。人間関係は難しいけど、一番大切なこと、みんなはつながっている」と答えた。ジュリアンさんは佐々木さんに「僕にとってこの出会いは宝物です」と何度も感謝の言葉を伝え、佐々木さんも「ぜひまた家族で来てください」と伝えた。 東日本大震災の深い悲しみを経験した人たちが今を生きる三陸。その地を訪れることで自らの喪失体験と向き合い心を整えたジュリアンさんは、今後も震災をテーマに本を書くつもりだ。 ジュリアンさんは「一番大切なポイントは“希望”がある。いつもどこでも“希望”を見つけることができると思う。ノンフィクションのプロジェクト、この東北の大震災の話について書きたい」と語った。 (岩手めんこいテレビ)
岩手めんこいテレビ