35歳俳優「あざとカワイイ」イメージはもうない?話題の新ドラマで見せた“生々しい表情”とは
イケメン俳優として“消費”されてしまう懸念
そもそもイケメンという言葉が意味するのは、「イケてるMENS」というように男性全般を指すもの。でもどうやらこの四字熟語を聞いて人々がすぐに関心を寄せ、判断したがるのは、男性の「面」(メン)がイケてるかどうかばかりなのだ。 内面(演技)より外面(顔)が圧倒的に重視されてしまう。イケメン俳優の演技を見るとき、前提として顔に対する評価が先行してしまう懸念がつきまとう。 イケメン現象学の視点から捉えると、イケメン・オブ・ザ・イケメンの千葉雄大が消費され尽くしてしまわないか。イケメンという形容が不名誉な足かせになるのではないか。筆者はとにかくこれを懸念していた。 特に『黒崎くんの言いなりになんてならない』(2016年)以降の千葉のイケメン要素を構成するカワイイ(ないしはあざとカワイイ)成分が、年齢を重ねるごとにどう変化するのか。うまく化学反応を起こして、深い味わいとして内面が掘り下げられる必要があったのだが、現在の千葉はどうだろう?
煮詰まってきた感を払拭する『アンメット』
ファンからの期待に応えるように、カメラの前に立つ本人もかなり意識的にあざとカワイイを実践し、体現してきた印象がある。30代突入以後の出演作が彼の現在を読み解くポイントになる。 まず田中圭主演の人気シリーズのシーズン2作品となった『おっさんずラブ -in the sky-』(テレビ朝日、2019年、放送時に千葉は30歳)では、カワイイにクールを加味した鬼に金棒のイケメンキャラを強く訴求。 光源氏が『源氏物語』の世界を飛び出して現代にタイムスリップしてくる『いいね!光源氏くん』(NHK総合、2020年)のタイトルロールは、角が取れたまろやかなあざとカワイイ仕草が、圧倒的な萌えの供給源となった。 一方で、そのまろやかさが、『恋するイヴ』当時のようなきらっきらな純度100%のかわりに、どこか手馴れた印象を与え、経験を積んだ結果としてのしたたかなケレン味ともとれた。 誤解を恐れずに言えば、ちょっとキャリアが煮詰まってきたというか、翳りを感じるところもあった。千葉雄大は、イケメンとして徹底的に消費されてしまったということなのか……。 どっこい、現在放送中の『アンメット』がそれが杞憂に過ぎないのだとすっぱり示してくれた。