「もったいない」 夫の医療費をしぶった妻が知った「逆に損している」という衝撃 診察代や薬代を抑え、適切な治療を受けるコツ
お金を理由に、本来受けるべき医療を自己判断でセーブしてしまう――。今、困窮世帯のみならず、一般的な所得の世帯でも、こうした問題が生じている。 これまで1000人を超える患者を在宅で看取り、「最期は家で迎えたい」という患者の希望を在宅医として叶えてきた中村明澄医師(向日葵クリニック院長)の連載。 今回は、お金を理由に適切な医療を受けてこなかった難病患者や、「子どもにお金を残したい」という理由からがん治療を制限する母親のケースを基に、適切な医療につながるためのポイントや考え方を解説する。 【図表で見る】指定難病患者への医療費助成制度-医療費助成の対象となる人-
パーキンソン病の疑いで、体を思うように動かせなくなっていたAさん(男性、70代)。同居する妻がAさんの介護をしています。筆者の夫婦との出会いは、Aさんのケアマネジャーから筆者に「診てもらいたい患者さんがいる」と、連絡が入ったことがきっかけでした。 ■国の「指定難病」になっている病 パーキンソン病とは、脳の異常から動作が遅くなる、手足が震える、バランスが取れなくなるといった、主に体の動きに関わる症状などが表れる病気で、国の「指定難病」にもなっています。
医師から指定難病と診断され、かつ重症度分類に照らして病状の程度が一定以上である場合などでは、難病法によって医療費の助成を受けることができます。 しかし、Aさんはパーキンソン病の疑いで、医師から確定診断のための検査など勧められていたにもかかわらず、確定診断は受けないままに過ごしていました。 妻が確定診断を受けるために必要な検査代を渋っていたのに加え、難病の医療費助成などについての知識があまりなく、「診断を受けても意味がない」と思い込んでいたのが最大の理由だったようです。
聞けば、Aさんの通院が難しくなってからは、妻がAさんの代理で受診し、本人の通院時と同じ薬を継続して処方してもらっていたといいます。 言わずもがな、患者さん本人でなければ薬を処方してもらうことはできません。本人の症状を直接診ないことには、医師も適切な薬の処方ができないはずです。 ■お金を使うのはもったいない 実際、筆者がAさんと初めて会ったときは、Aさんの状態が通院時とは変わってきており、以前の薬では合わなくなっていました。その結果、血圧が下がり過ぎているなどの問題が表れ、トイレで失神してしまうなどのトラブルも続いていたようです。