『祓除』も話題…TVで放送中止クラスの“尖りすぎ”モキュメンタリーを連発するテレ東P・大森時生
尖りすぎた結果? 放送中止で騒がれた『SIX HACK』
極めつけといえるのが、2023年5月に放送された『SIX HACK』だ。「あなたが偉くなるための番組」と銘打ち、ユースケ・サンタマリアや松村沙友理を始めとした出演者たちが、自己啓発めいたライフハックについて語り合う番組だった。 第1回目の放送でテーマとなったのは、“会議で優位に立つ方法”。その内容は「相手の発言を個人の意見にすぎないと断定する」「答えづらい質問を相手に振ることで場を掌握しろ」といったもので、出演者たちは真面目にその方法を語る。多少屁理屈のように思われるが、ここまではまだ序の口だろう。 第3回目の放送では、ライフハックの域を飛び越え、“集合的無意識”をテーマに番組が進行していく。「“No eyes”と呼ばれる既得権益層が裏から社会を回している」といった陰謀論的な思想が展開された挙句、「真=神(シン)」と繋がるための鍛錬方法まで紹介。おまけにラスト10分はひたすら電子ドラッグのような映像を流し続ける始末だ。 この番組もまた種明かしが一切用意されておらず、視聴者は真実と虚構の狭間で困惑させられるという仕組みで、さらにモキュメンタリーとして過激さを増していた。しかし過激すぎたゆえにクレームを招いたのか、4週目の放送が突如放送休止に。もともと全6回を予定していたはずが、そこで打ち切りとなったことが発表された。 同番組には、構成としてウェブサイト「オモコロ」のライターでお馴染みのダ・ヴィンチ・恐山氏が参加。打ち切りに際して、自身の「note」で「無念。ちゃんと全6回走りたかったが……」とコメントしていたが、真相は定かではない。 大森氏の試みはある意味、モキュメンタリーを通して、テレビ業界に風穴を開けるものだと言える。その挑戦を目の当たりにした視聴者は、「こんなものをテレビで放送してもいいのか?」というスリルを味わえるはずだ。 ちなみに大森氏はこうした企画のなかで、ダ・ヴィンチ・恐山氏以外にも、『フェイクドキュメンタリー「Q」』の監督である寺内康太郎氏や、『かわいそ笑』や『6』などの怪談で知られる梨氏とも手を組んできた。攻めることをやめないクリエイター陣が、どんな禍々しい番組を作り上げていくのか今後も期待したい。
キットゥン希美