<藤浪晋太郎が激白 最終回>ハートが強い理由とは?
――楽天の田中将大選手が今季活躍した理由のひとつに「ギアチェンジ」のうまさ、つまり1番から9番、1回から9回までをトータルでメリハリをつけながらマネジメントする能力の高さがあったと言われています。藤浪さんのピッチングにも、そういう意識が少し見えました。 「僕には、マネジメントというような偉そうなものはないのですが、ピンチで、ベストボールが残っているようにするためのメリハリは意識しています。普通に投げているとき以上のものを勝負どころでは、見せないとだめなんです。ここ一番で、『今日一のボール』を投げるためにはどうするか?ですよ。常にマックスを出していると、そういうピンチに、そういうボールが残っていません」 ――1年のスパンで見ると、スランプ、ピンチはありましたか? 「高卒1年目ですから、打たれるのは当たり前です。もっと苦しむかと思っていました。シーズン途中で2軍降格もあるかもしれないと考えていたくらいでした。そういう意味では、6月くらいに勝てなかった時期もありますが、ピンチとは思いませんでした」 ――スパンをもっと大きくして人生に置き換えればピンチはありましたか? 「どうですかねえ。このままじゃ駄目だと意識が大きく変わったのは、高校2年生の時ですね。大阪府大会の決勝戦で負けて(東大阪柏原高を相手に7回途中4失点で降板)、秋も天理に負けたんです(近畿大会の準々決勝で7回8失点。それでも大阪大会は制していたのでセンバツ出場)。『このままじゃいけない』と、冬から夏にかけて意識が変わって練習への取り組み方が変わりました」 ――このままでは、将来プロを目指すような投手にはなれっこないと? 「それもそうですが、チームとして勝ちたかった。その意識の方が強かったですね。『藤浪は勝てないピッチャー』という評価を覆して『ここ一番で勝てるピッチャー』と言わせたかった。その気持ちで冬のトレーニングに臨んだことを覚えています」 ――まさに春夏を甲子園で連覇して、プロに入っても『藤浪は、甲子園では負けない』という評価に変えました。『藤浪は勝てない』という時代があったことを僕なんかは信じられないのですが、今、なぜ、何が、そうさせたのだと思いますか? 「何がって聞かれると……それはわかりません。単純な自分の能力の変化もあるでしょう。自信がついたということもありますね。ただ、しっかりと、『そういう風になりたい』と思って、(練習を)やってきたことじゃないですか」