“2023年のヒロイン”だった浜辺美波 『約束のネバーランド』エマ役からの進化を辿る
映画『約束のネバーランド』が1月4日21時よりフジテレビ系で地上波放送される。本作で主人公を務めるのは、 『第74回NHK紅白歌合戦』で初めて司会を務め上げた浜辺美波だ。浜辺は「2023年のヒロイン」だったと言っても過言ではない目まぐるしい活躍を見せた。 【写真】映画『約束のネバーランド』丘の上に立つ浜辺美波、城桧吏、板垣李光人 まずは朝ドラ『らんまん』(NHK総合)の主人公・槙野万太郎(神木隆之介)の妻・寿恵子役が記憶に新しい。『紅白歌合戦』でも、『らんまん』の主題歌を担当したあいみょんのステージの応援に神木が駆けつけ、槙野夫婦の再共演が実現した。 寝食も忘れて植物の研究に打ち込む一般的には“結婚向き”ではない夫を献身的に支えた影の存在というよりも、浜辺演じる寿恵子は、自分自身も未知なる世界との出会いを“新しい冒険”だと言って楽しんでいる非常にタフな印象を受けた。それでもあまりに家庭を顧みない研究一筋な万太郎に寂しさを募らせつつも、相手を自分の意のままに動かそうとしたり、“察してほしい”と気を引こうとしたりすることもない。自分が万太郎の人生に巻き込まれたのではなく、そこに飛び乗る覚悟をしたという自負とプライドが彼女には滲んでいた。突っぱねてしまうような頑固さではなく、しなやかに強くって可憐でいつも主体的に楽しもうとする寿恵子のスタンスは本当に魅力的だった。そんな彼女が年齢を重ねて熟成され深まっていく寿恵子の変化を声質や目力、落ち着いた佇まいで表現して見せてくれた。 そして浜辺と神木との再共演が観られたのが、映画『ゴジラ-1.0』(2023年)だ。主人公・敷島(神木隆之介)と共に一つ屋根の下で暮らしながら手を取り合って窮地を乗り越えるヒロイン・典子を浜辺が熱演。また浜辺は、映画『シン・仮面ライダー』(2023年)でもヒロイン・緑川ルリ子役を好演した。どんな世界線でも浜辺の強く切実な輝きを放つ視線は逆境を跳ね返し、希望を宿す最後の砦かのようだ。一方的に守られるだけの庇護の対象ではなく、一緒に冒険に繰り出す同伴者としてのヒロインが本当によく似合う。軽口を叩き合うようなタフさも兼ね備えている役どころも多く、コメディエンヌとしての才も発揮している。 『約束のネバーランド』の主人公・エマ役では、孤児院や母親代わりの“ママ”ことイザベラ(北川景子)の秘密を知ってしまい、これまでの幸せに溢れ守られた日々が虚像だったという厳しい現実を突きつけられる。まさに天と地を味わい、それを咀嚼し、自身の運命に抗おうとする気持ちの変化を表情や佇まいで見せてくれた。それまでの伸び伸びと無邪気に過ごしていたエマの子どもらしい姿が印象づけられているからこそ、そんな彼女らを待ち受けるあまりに過酷な運命がより際立った。 2024年も、映画『サイレントラブ』では不慮の事故で目が不自由になり、絶望の中でもがくピアニスト志望の音大生・美夏というヒロイン役、『もしも徳川家康が総理大臣になったら』ではテレビ局の報道記者役で主演を務める。キャリアウーマン役の浜辺が観られるのも楽しみで、また彼女のさらなる進化と飛躍が目の当たりにできる2024年になるのは間違いないだろう。
佳香(かこ)