これさえ押さえればOK!筋金入りのスタトレファンが「スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド」の魅力を徹底解説
異種族との友情や交流、そして戦争を人間ドラマとして描き、1966年のドラマシリーズから現在まで愛され続けている傑作シリーズ「スター・トレック」。その最新テレビシリーズ「スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド」が、ついに日本に上陸!今回は、半世紀以上スタトレを追い続けているトレッキー(スタトレファンの総称)のライター堺三保が、本作の魅力を大解剖!スタトレをよく知ってる人も、長寿シリーズすぎてどこから手を付けたらいいかわからない…という人にも優しく、その魅力を解説してもらった。 【写真を見る】これぞSFのなかのSF!「スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド」は、現代的にチューニングし直された新しい「宇宙大作戦」 ■スタトレ最新シリーズ「ストレンジ・ニュー・ワールド」がやってきた! 「宇宙。そこは最後の開拓地…」というわけで、スタトレこと「スター・トレック」のファンやSFファンの皆さんはもちろん、洋ドラが大好きなすべての皆様、お待たせしました。待望の「スター・トレック」最新テレビシリーズ「スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド」(以下「SNW」)が、ついに日本でも配信開始されることになりました。 SNWは、遙かな未来、宇宙船エンタープライズ号とその乗組員たちが銀河系を股にかけて冒険を繰り広げる、まさにこれぞSFのなかのSFとでも言うべき作品です。本稿では、その魅力について基本的なところから押さえていこうと思いますので、いにしえのマニアから初心者の方々まで、まずはご一読いただければ幸いです。スタトレ、こわくないよ~(笑)。 はじめに言えることは、いままで「スター・トレック」を見たことない人は、逆になにも気にすることなくドラマを見ても、全然問題ないだろうということ。細かい設定がいっぱいありますが、ほぼ本筋とは関係ないし、必要な時は毎回誰かが説明してくれるので大丈夫。逆に、混乱してしまいそうなのが、ちょっとはスタトレをかじったことがある人々。最初のシリーズである「宇宙大作戦」(カーク船長の時代)とその劇場版を知っているめっちゃ古強者のオールドファンや、90年代の「新スター・トレック」(ピカード艦長の時代)あたりを履修している(やっぱり)オールドファンから、さらには21世紀に入ってから作られたリブート版劇場映画シリーズ(こっちもカーク船長)を見ている人たちですね。 そういう皆さんは、とりあえずこれだけ覚えておいてください。SNWは、エンタープライズ号をカーク船長が指揮する前、それもリブート版じゃなくて、元々の「宇宙大作戦」の世界の、6年くらい前のエンタープライズ号のお話です。以上!もう、ほかのことは考えなくていいです。第1話だけ、ちょっと「スター・トレック:ディスカバリー」(こちらは以下、「DIS」ということで)第2シーズン最終話の出来事に少し触れていたりしますが、そこは気にせず、どんどん先に進んでオーケー。もちろん、第1話冒頭でパイク船長がなかなかエンタープライズに乗りたがらなかった理由が気になってしかたない人は、ぜひともDISの最初の2シーズンを見てください。あっと驚くストーリーが待っています。 そんなわけで、実はSNWの世界とリブート版映画三部作(『スター・トレック』(09)、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(13)、『スター・トレック BEYOND』(16))の世界とは、別の時間線なんですね。なので、何人か同じキャラクター(カーク、スポック、パイク)が登場するのですが、設定が微妙に違うのです。ですが、リブート版も未見の方は、いっそ二つの世界の差異を確認しつつ、映画ならではの大迫力の冒険アクションを楽しむという手も全然ありですよ。 ■現代的かつ見やすいスタトレ。それがSNWだ! まず一番に言えるのは、基本的に1話完結のスタイルなので、とっても見やすいこと。連続ドラマだと全話続けて見ないとお話が完結しないので、途中どうしてもやきもきして疲れちゃうけど、SNWは毎回きちんとお話が終わるから、そういう心配はなし。なんだったら、あらすじを見ておもしろそうな話数から見ることだってできます。最近のスタトレのドラマはいまどきらしく連ドラ形式のものが増えているのですが、SNWの1話完結方式は、実はかつての「宇宙大作戦」や「新スター・トレック」と同じ形式なんですよね。ここのところはちょっと先祖返りしていると言えるでしょう。 そして、これもスタトレの伝統なのですが、奇想天外なSF的ストーリーだけじゃなく、現代の私たちが直面している社会問題の数々もお話のなかに盛り込んで、鋭い問題提起をしているところ。しかも、常にどこか楽観的で理想主義的な「明るい未来」の可能性を見せてくれるところが、ほんとに見ていてうれしくなります。暗い出来事が多いいまだからこそ、私たち視聴者は余計にSNWの活躍に心を打たれ、救われるのではないでしょうか。 1話完結で、社会問題をテーマに盛り込んで、というと、ほんとに昔懐かしい「宇宙大作戦」みたいな感じがしますが、SNW最大の魅力はその「宇宙大作戦」を現代的にリファインしてみせたところにあります。船のデザインや乗組員たちのコスチュームなど、元々の「宇宙大作戦」のものを下敷きにしつつも、現代の視点で見てカッコいいものに細かくチューニングされているのです。もちろん、VFX技術も最新のCGや合成が使われていて、見ている人を飽きさせません。 そしてなによりも、登場人物たちの描き方がリアルで魅力的なのも、現代のドラマらしい特徴でしょう。豪快なリーダーだけど、趣味は料理と、意外な側面もあるパイク船長。超優秀な新人だけど、実は内気で仕事も好きで選んだわけじゃないウフーラ候補生、いつもにこにこ、頼りになるけど、人には言えない悲しい秘密を抱えているムベンガ医師など、みんなそれぞれに多面的な素顔を持つ人間味にあふれたキャラたちなのです。彼らはみんな完璧なヒーローなんかじゃありません。それぞれに悩みを抱えつつ、自分の仕事に懸命に取り組んでいる、ある意味「普通の人々」であり、そこが視聴者に親近感を感じさせてくれるのです。重要な女性士官の数が多いあたりは、いかにも現代版「宇宙大作戦」といったところ。もちろん「宇宙大作戦」でもおなじみのスポック科学主任やチャペル看護師、副長のナンバーワンといった面々も大いに活躍するあたりは、オールドファンにもうれしいところでしょう。 要するにSNWは、現代的にチューニングし直された、新しい「宇宙大作戦」なのです。カーク船長着任の6年前(実はカークも登場したりするんですけどね)の、パイク船長率いるエンタープライズ号の活躍を、存分に楽しんでもらえればと思います。 ■「スター・トレック」っていったい何作あるの? この項では、スタトレっていったい何作あって、それぞれどう違うの?ということについて、できるだけ短く簡単にまとめてみました。今後のご視聴のお供になれば幸いです。でまあ、結論から書くと、2023年12月現在、「スター・トレック」は実写ドラマが8シリーズ、アニメが3シリーズ、映画が13作あります(そして多分まだまだ増えます)。これらをざっくりと作品世界内での時系列順に並べると、以下のような感じになります。 1.「スター・トレック:エンタープライズ」 2.「スター・トレック:ディスカバリー」(シーズン2まで) 3.「スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド」 4.「宇宙大作戦」 5.「まんが宇宙大作戦」 6.スター・トレック劇場版Ⅰ~Ⅵ 7.「新スター・トレック」 8.「スター・トレック:ディープ・スペース・ナイン」 9.「スター・トレック:ヴォイジャー」 10.スター・トレック劇場版Ⅶ~Ⅹ 11.「スター・トレック:ローワー・デッキ」 12.「スター・トレック:プロディジー」(日本未紹介) 13.「スター・トレック:ピカード」 14.「スター・トレック:ディスカバリー」(第3シーズン以降) 番外.スター・トレック、リブート版劇場三部作 1は、22世紀が舞台。一番最初の宇宙船エンタープライズ号(NX-01)とその乗組員たちが活躍するお話。船長はジョナサン・アーチャー(スコット・バクラ)。 2~6は、23世紀が舞台。2は宇宙船ディスカバリー号(NCC-1031)とその乗組員たちの活躍を描いたものです。主人公は船長じゃなくてマイケル・バーナム中佐(のちに大佐)。3は、このコラムでずっと書いているSNWのこと。宇宙船エンタープライズ号(NCC-1701)のお話。船長はクリストファー・パイク。4は、一番最初に作られた作品で、エンタープライズ号の船長がジェイムズ・T・カークに交代しています。5も、カーク船長指揮下のエンタープライズ号の冒険を描いています。ただしアニメ版。6も、同じくカーク船長とエンタープライズが活躍します。こちらは劇場映画シリーズ。途中からエンタープライズ号が形は同じだけど新造艦(NCC-1701-A)に交代します。 7~13は、24世紀が舞台。7は、5代目エンタープライズ号(NCC-1701-D)の活躍を描いたものです。船長はジャン・リュック・ピカード。8は、7とほぼ同時期の辺境の宇宙ステーション、ディープ・スペース・ナインを舞台にした作品。ステーションの指揮官はベンジャミン・シスコ中佐。9も、7や8とほぼ同時期が舞台。超常的な力で銀河系の反対側に飛ばされてしまった宇宙船ヴォイジャー号(NCC-74656)が、地球へ帰るため延々と航海する話。船長はキャスリン・ジェインウェイ。10は、7のエンタープライズDとピカード船長たちのその後の活躍を描いた劇場版シリーズ。途中でエンタープライズが新型艦エンタープライズE(NCC-1701-E)と交代します。11は、宇宙船セリトス号(NCC-75567)で勤務する新米少尉たちの日々を描いたコメディアニメ。全然かっこよくない若者たちが失敗しながらも任務を続けていく姿が描かれています。12は、11と同時期が舞台。なぜか放棄されていた実験船プロトスター号(NX-76884)を偶然見つけた若者たちが、それに乗り込んで冒険の旅に出る話です。13は、年老いてほぼ隠居同然となっていたピカードが、再び様々な冒険をすることになるというお話。新型エンタープライズ2隻(NCC-1701-FとNCC-1701-G)も登場します。 14は、なんと32世紀が舞台。遠い未来にやって来てしまったバーナムらディスカバリー号の乗組員たち活躍を描いています。 そして番外としてあるのが、リブート映画版。第1作を見てもらうとわかるのですが、この世界は、本来の時間線の12のちょっとあとくらいの時代からタイムトラベルしてカーク船長が生まれる直前の時代に現れた悪漢が、歴史に干渉して作ってしまった別の時間線の世界の出来事なのです。なので、元々の3~5と時代は同じだけど起こっている事件が違うのでした。こちらはこちらで、まだまだ続編が作られるかもしれないので、これからも要注目ですぞ。 とまあ、めちゃくちゃたくさんあるわけですが、ゆるくつながってはいるものの、基本的にシリーズごとに独立した作品となっているので、SNWが楽しかった人は、気になったものから見ていけばいいと思います。まずはDISかリブート版あたりが、話数も少ないし、最近の作品で映像もすばらしいのでオススメかと。今回その魅力を解説したSNWは、12月1日からスタートしたWOWOWオンデマンドのストリーミングサービス「Paramount+」にて独占配信中なので、気になった方はぜひ年末年始の休暇を「スター・トレック」とともに過ごしてはいかがだろうか。 文/堺三保