（イラスト＝モリナガ・ヨウ）

　本連載、今回52回、ちょうど1年となりました。最初は13回の予定で始まったものが、なんとか1年。テレビ番組で言えば4クール。ガンダム（「機動戦士ガンダム」全43回）もイデオン（「伝説巨神イデオン」全39回）も打ち切りでたどりつくことができなかった1年、52回に、途中で男坂を上ることもなく、なんとか到達です。ひとえに愛読してくださる方々のおかげです。ありがとうございます。 　私事ではありますが、この7月、『日本の宇宙開発最前線』（扶桑社新書）という新書を出しました（書影とリンクは記事末尾に）。タイトル通り、日本の宇宙開発の現状を、世界、特に米スペースXと対比する形で論じた本です。読んで頂ければ幸いです。 　――という慶事の一方で、現在自分は病臥（びょうが）しております。1週間前から発熱し、熱が下がった今も、せきとたんが続いています。ここまでひっくり返ったのは、毎年インフルエンザ予防注射を受けるきっかけになった、20数年前のインフルエンザ罹患以来です。 　というわけで今回は短めに。景気の悪い感染症の話から。 　仕事柄か性格か、多少食事時に適さない話でもストレートに書いてしまう性（さが）なので、以下、生々しい単語や話が苦手な方はご注意ください。 　体調の異変を感じた時、まず疑ったのは新型コロナウイルス感染症だった。 　自分の行動を思い出すに、異変発生の4日前、私は東京・千代田区の国会図書館に一日籠もって調べ物をしていた。自分はマスクをしていたし、周囲に怪しいせきなどしている人がいないことは確認していた。が、それでも不特定多数の人と長時間同じ空間で過ごしたのはその時だけだ。6月後半に、7回目のmRNAワクチン任意接種を受けたばかりだったが、大量のウイルスに暴露すれば、いかにワクチンで防護していても発症するということは知っていた。 　もうひとつ、インフルエンザという可能性もある。すでにインフルエンザのピークは過ぎているが、油断はできない。こちらも昨年11月にワクチン注射を受けている。 　と　ここまで考えて、自分がすでに大きな脅威の2つに打つべき手を打っていることに気がついた。 ●ワレ、籠城戦ヲ決意ス 　コロナウイルス感染症の場合は、診断確定してもできることは基本的に対症療法だ。抗ウイルス剤の治療手段があるが、これは一部負担が発生する。 　インフルエンザの場合は、抗ウイルス剤が保険適用になっている。が、あまりに抗ウイルス剤が使われすぎて、耐性のある新種の出現が懸念されてもいる。ワクチンを接種しているので、インフルエンザ脳症のような重篤な状態に陥ることはまずないだろう。 　つまり、事前にワクチンを接種しているので、わざわざ症状悪化や二次感染のリスクを引き受けてまで通院し、確定診断を受ける利点は小さい。 　もうひとつ、コロナウイルス感染症とインフルエンザ以外の、なにか別の、素人の自分では想像もできないような病気である可能性はある。が、その可能性は小さいだろう。今後の症状の推移を観察して、病院に行くかどうかを判断すればよいはずだ。 　従って、行うべきは、病院に行って確定診断を出してもらうことではない。他人に感染させないように閉じこもって静養することだ。 　コロナウイルス感染症に罹患した場合に備えて、各種備蓄は常日頃から用意していたし、幸いなことに日常的な買い物も、ちょうど行ったばかりだった。そのまま外出しなくとも1週間以上は生活できる。食料や物資が足りなくなれば、ネットスーパーを使えばいい。 　このように判断して、私は閉じこもっての療養生活に突入した。