トーヨータイヤが過去最高の業績で決算の上方修正予想、2025年は「不断の挑戦を重ね、跳躍する年」と清水社長
オープンカントリー、プロクセス、さらにはトラック用タイヤなどのジャンルで強みを見せているTOYO TIRE(トーヨータイヤ)。年末恒例の記者会見に清水隆史社長が登壇、当日は新タイヤである「OPEN COUNTRY R/T TRAIL」(オープンカントリー R/T トレイル)の発売とも重なり、発表会場にてお披露目された。 【画像全26枚】 ◆世界的にセールスが好調なトーヨータイヤ、過去最高売上・利益の更新を予想 トーヨータイヤの2024年の振り返り、さらには2025年に向けての抱負などが語られた。まずはトーヨータイヤが2021年から掲げてきた中期経営計画「中計’21」(2021-2025年度)は、“変化に対し、迅速かつ柔軟に適応する力を強化していく”を方針として掲げている。その結果、業界でもトーヨータイヤらしさを際立たせることになり、年度の目標も多くの項目をクリアしたと自己評価した。 具体的な数値として、2024年度第三四半期の業績では最重要である北米をはじめ日本、欧州での販売強化が功を奏したとのこと。1-9月の売り上げ高は累計で過去最高を更新、さらに利益面でも運賃等のコスト抑制、為替の円安メリットもあり営業利益、計上利益でも過去最高としたことを報告した。2024年度の通期業績予想も営業利益:860億円、経常利益:820億円、当期純利益:600億円、配当予想共にそれぞれ上方修正したことも社長の口からこの席上で発表された。 次に好調な同社の業績が、どのような背景から生み出されているのかを振り返った。トーヨータイヤにとって重要な地域となる北米では、SUVやピックアップトラックの大口径タイヤのカテゴリーにおいて圧倒的なプレゼンスを誇ることをアピール。北米では近年安価なアジアンタイヤが流入して市場が混乱していることも語られたが、トーヨータイヤは独自性の強いモデルラインアップやブランド力を備えることで、結果的に底堅いタイヤ販売に繋がっていることが語られた。 一方、アメリカの話題の中でロサンゼルス・ドジャースとのスポンサーシップ契約を結んだことも紹介された。大谷 翔平選手や山本 由伸選手の日本人選手の活躍もあり注目度が高いこと、さらにスタジアム内の看板やインタビューボードなどにトーヨータイヤのロゴがちりばめられることで、ブランドの認知の向上に手応えがあったことも2024年の同社にとっては大きなトピックになった。 ◆欧州はセルビア工場を中心に大きく体制変更、国内市場も堅調に推移 欧州の状況は変化を迎えていることを紹介。一昨年から稼動を始めているセルビア工場がフル生産を開始、最新の生産技術を備えた最新鋭の工場で、高性能タイヤ製造はもとより欧州市場のコスト競争にも勝ち抜いていく力を付けていきつつあるとのこと。さらに11月にはセルビアに販売統括会社を設立することを発表、これまではドイツ、オランダ、イタリアに点在していた欧州の販売機能を新会社に集約することも紹介した。加えてドイツにあるR&Dセンターの一部の機能を、同じくセルビア工場へ移管することも公開されている。 日本市場の振り返りでは、小型EVトラック向けのタイヤ発売をトピックとして取り上げた。EVトラックは車両重量の増大や加速性能向上で、タイヤへの負荷が高くなる。それに合わせたタイヤ開発が急務となっているのだが、いち早くトーヨータイヤが開発を進めたことから運輸業界からの期待を集めていることも紹介された。 ◆“サステナブルなオプカン”が登場、日本市場に合わせて細かなチューニング 乗用車向けのタイヤとしてはお馴染みとなっている「オープンカントリー」、基幹ブランドである「プロクセス」のモデル拡充が続いていることも話題として取り上げられた。中でもオープンカントリーは“オプカン”の愛称で語られることが多くなったことについて、“消耗品であるタイヤを略称で呼んでもらえることは、ユーザーの支持さらに親しみを持ってもらえていることの証である”と語った。 当日はオープンカントリーの新モデルであるオープンカントリー R/T トレイルの発表日(2025年3月発売)であることから、会場には発表されたばかりの同モデルが展示された。北米ですでに登場しているR/T トレイルだが、国内モデルは実は別チューニングになっており、その1つがサスティナブル素材を30%使っている点だ。オフロードタイヤにサスティナブル素材を持ち込む初の試みとなったのも、オフタイヤでさまざまな先鞭を付けてきた同社ならではの新たな試みだろう。 静粛性と快適性が高られており、新たなオフロードタイヤのジャンルとして開拓したラギッドテレーン(R/T)の中でも、よりA/Tに近い性格のモデルとしているのも特徴だ。 ◆モータースポーツも好調、オープンカントリーはバハ/プロクセスがニュルでそれぞれ年間チャンピオンを獲得 またオープンカントリー、プロクセスともに積極的にモータースポーツシーンに参加していることも社長の口から語られた。会場には先日、メキシコで開催されているスコア・バハ1000で3位に入賞し「SCORE World Desert Championship」の最上位クラスであるSCORE Trophy Truck部門の年間チャンピオンを獲得したアラン・アンプディア選手の参戦車両に装着されていた実物のタイヤ(オープンカントリーM/T-R)も登場。戦うレースタイヤを目の当たりにして、参加者の気分も一気にヒートアップした。 一方のプロクセスも2024年は、ニュルブルクリンクのNSLシリーズで年間チャンピオンを獲得するなど、華々しい戦績を上げた年となった。これらのモータースポーツの現場で得たデータや知見を次の商品開発に生かすことも同社の強みとなっている。 高付加価値商品を次々と市場に投入することで、市場の評価を高めているトーヨータイヤ。2025年は“各地の生産拠点の能力を最大化し、グローバル生産体制を確固たるものとする”ことが誓われた。最後に清水社長から2025年のスローガンとして「原点回帰。普段の改革と柔軟性で強靱化を図る年」が発表される。 乙巳(きのとみ)年にあたる来年は“努力を重ねてきたことが屈曲して軋むほどとなり、上蓋を跳ねるがことく芽吹くと一気に極限まで伸びる”と言う意味を持つという。2025年はトーヨータイヤが創立80周年を迎える記念すべき年で、ますます意欲的な製品開発や活動が期待される。
レスポンス 土田康弘