『世にも奇妙な物語』史上最高の神回は? 究極のトラウマ回(3)子供たちが洗脳され…美人教師の怖すぎる素顔
1990年に放送がスタートした『世にも奇妙な物語』。喜怒哀楽のいずれにも分類できない斬新なストーリー、心を掴む演出と演技によって、老若男女問わず愛されている。今回は、同番組の30年以上にわたる歴史の中から「神回」と名高いエピソードをセレクト。物語の内容と見どころを解説する。第3回。(文・編集部)
『23分間の奇跡』(1991/主演・賀来千香子)
放送日:1991年12月26日 演出:河野圭太 脚本:石井信之 原作:ジェームズ・クラベル『23分間の奇跡』 出演:賀来千香子 【作品内容】 クーデターにより憲法が変更された日本。とある学校の教室で、妙齢の女性教師がすすり泣いていた。生徒たちとの別れを惜しんでいるのだ。 時報が鳴り、美麗な女性教師・鈴木マリがやってくる。元の教師に退出を促した彼女は、子どもたちの名前や特技をスラスラと暗唱し、一気に心をつかんでいく。 【注目ポイント】 1945年8月30日。焼け野原の日本に降り立った連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーは、到着するや日本に五大改革を指示した。そのうちの一つが、「教育制度改革」だ。 これにより、明治以来の教育勅語は廃止。教科書の中で軍国主義を称揚する箇所には墨が塗られ、日本は民主主義へと大きく舵を切った。かくして、私たちには、民主主義という「当たり前」が刷り込まれるようになった。 GHQによる上からの民主主義が本当に正しいかどうかについてはここでは触れない。しかし一つだけ確かなのは、教育が少なからずマインドコントロールの要素を含んでいるということだろう。 本話の主人公、鈴木マリは、そんな教育の本質を逆手に取り、生徒たちの心を次々と塗り替えていく。 そして、彼女に唯一反発していた男子生徒を懐柔し、彼に「平等・自由・平和」と書かれた額縁を窓から投げさせる。生徒たちにとっての真実をいともたやすく捻じ曲げてしまうその術は、まさに「奇跡」というほかない。 加えて特徴的なのは、鈴木マリの美しさだろう。緑色のスタイリッシュな衣装に身を包んだマリの姿は、失礼ながら、どこか野暮ったい印象の他の教師や生徒の姿とは一線を画している。本物の悪魔はいつも、天使の皮をかぶって忍び寄ってくるのだ。 なお、本話の原作者のジェームズ・クラベルは、エミー賞14冠に輝いたハリウッド制作のドラマ『SHOGUN 将軍』(2024)の原作者としても知られる人物。彼の娘が学校で「忠誠」という言葉の意味を知らずに、宣誓を丸暗記していたことに疑問をいだき、『23分間の奇跡』を執筆したという。 第二次世界大戦に従軍し、日本軍の捕虜となった経験もあるクラベル。それだけに、クラベル自身の戦争や国家に対するリアリティが原作に反映されていることは、想像に難くないだろう。 世界中のあちこちで分断が進む昨今。この話が、未来の世界を予見した作品にならないことを願うばかりだ。 (文・編集部)
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