「現状を伝えて」紛争地域の患者の願い 札幌の医師が写真展
【北海道・札幌】世界の紛争地域で医療活動にあたっている「国境なき医師団」(以下MSF)。そのMSFに2010年から参加している札幌徳洲会病院の外科医師・田辺康さんが、中東やアフリカでの活動の様子を収めた写真展を6月4日まで札幌市内で開いています。 【写真】48時間以内に世界展開「国境なき医師団」とは?
「国境なき医師団」として中東などで活動
フランス語学校・文化センター機能を持つ「札幌アリアンス・フランセーズ」(札幌市中央区)で開催。田辺さんが個人的にフランス語を習っている縁で、この場所に決まりました。 これまで医者の卵たちにMSFでの活動を紹介していた田辺さんですが、一般公開できる形で写真を紹介したのは今回が初めて。イスラエル・ガザ地区、シリア、イエメン、中央アフリカの4か国での活動の様子を、約50枚の写真で紹介しています。医師の治療の様子のほか、廃墟の中にたたずむ子どもたちや、大けがを負った患者たちなどが生々しく写し出されています。 「写真を残している理由は2つあります。1つ目は、純粋に医療上の理由です。MSFの活動はいろいろな国の医師がある期間ごとに行うので、医療上のカルテとして患部の写真が必要になります。2つ目の理由は、自分の医者としての生き方を若い世代に伝えることです。日本の医学生はもちろんですが、先日はロシア・モスクワの医学生にもMSFの活動を伝えてきました」と田辺さん。
「命があるだけでも感謝」に気づく
「実は、紛争地域の患者たちから『日本の人たちに今の状況を伝えてほしい』と良く言われます。やはり、自分たちが取り残されているという感覚が非常に強いんでしょうね。世界の人々に自分たちの置かれている状況を知ってもらうことが、彼らの希望の光になっているようです」 これらの写真を見ていると、日本という国がいかに物質的に恵まれているかを感じます。田辺さんも、その日本の闇の部分を指摘します。 「日本は、70年もの間戦争が起こっていませんが、いじめやハラスメントなど陰湿な事件がないわけではありません。紛争地域に行くと、『命があるだけで感謝』という当たり前のことに気づき、心が洗われるような気がします。MSFの活動で何度も治療している患者さんに『ありがとう』と感謝される中で、自分の視野が広がりどのように生きていけばいいのかのヒントをもらっています」 田辺さんは、1か月間MSFの活動をして、3か月間札幌で勤務するというスケジュールで、7月にはナイジェリアに旅立ちます。帰国後に第2弾・第3弾の写真展を予定しているということです。 (ライター・橋場了吾)