物言う空売りヘッジファンドに制裁金、リサーチャーへの支払い隠蔽
(ブルームバーグ): 物言う空売り投資家に対する米当局の広範囲にわたる調査の結果、初の注目すべき処分が下された。企業の株価下落を見込んで大きく賭けるヘッジファンドと、弱気リポートを出すリサーチャーとの物議を醸す協力関係を垣間見ることのできる珍しい機会となった。
米証券取引委員会(SEC)は11日、系列の資産運用会社アンソン・ファンズ・マネジメントとアンソン・アドバイザーズに対し、弱気な調査リポートの発行者への支払いを隠したとして、合計225万ドル(約3億5400万円)の制裁金を科した。
SECによると、両社が監督するヘッジファンドは2018年遅くに否定的なリポートやソーシャルメディアへの投稿のタイミングについて外部のリポート発行者と協力し、400万ドル余りの利益を獲得。リサーチャーに110万ドルをひそかに支払っていたという。
SECはこのリサーチャーを特定しなかったが、同年9月と10月にナマステ・テクノロジーズとインディア・グローバリゼーション・キャピタルを公に批判した人物だという。この時期と対象企業は、著名ショートセラー、アンドルー・レフト氏率いるシトロン・リサーチによる当時の弱気な投稿と合致する。
レフト氏は規制当局から不正行為を追及されておらず、コメントを控えた。アンソンは和解に際しSECの主張について肯定も否定もしなかった。
ヘッジファンドと懐疑的なリサーチャーとの関係を巡る米当局の広範な調査が業界を動揺させ始めたのは3年前。当局は数十に上る資産運用会社とアクティビスト、50銘柄以上の株式取引に関して情報収集に乗り出していた。当局が当時探していたのは、空売り筋が協力し合って株価を不当に下げている証拠だったと事情に詳しい関係者は語っていた。
アンソンの創業者で代表のモーズ・カッサム氏は、両社に対する弱気な見方は最終的に裏付けられたと指摘している。後に社名変更した両社の株価は現在、当時の水準を下回って取引されている。両社の広報担当者にコメント要請したが、通常の営業時間外で返答はなかった。