診療所増床、病院に 循環器疾患 鹿行の救命率向上へ 神栖・鹿嶋ハートクリニック 茨城
主に循環器医療が専門の鹿嶋ハートクリニック(茨城県神栖市平泉)は、病床が19までの「診療所」から、特例で4床の増床が認められ、「病院」となった。2023年9月から進めてきた病棟の増床工事も24年12月に終了し、運用を開始。運営する医療法人玉心会の黄(こう)恬瑩(てんえい)理事長は「鹿行地域の救命率アップに一層努めたい」と意欲を示す。 同クリニックは09年に開院した。14年に入院病棟を開設し、心臓カテーテル検査や血管治療を開始し、16年には開胸手術を成功させた。19年には脳神経外科領域の血管内治療も始めた。県保健医療計画で心血管疾患に対する専門的治療や外科的治療などに対応することができる「専門的医療を包括的に行う施設」と位置付けられている。 鹿行医療圏は医療資源が乏しく、圏内の救急搬送件数の約4割が隣接する千葉県を含む圏外に搬送され、救急搬送に関わる収容平均所要時間でも県内下位の状況が続いている。循環器疾患の搬送でも同様な状況があり、特に夜間・休日に発生した患者に対応する体制が脆弱(ぜいじゃく)なままだ。 このため、病床は過剰地域で新たに設置することができないものの、循環器疾患などの専門病床は特例で増床が認められることから、この制度を活用した増床の手続きを進めてきた。 増床認定に向けては、20年の同クリニックの病床稼働率が平均91.7(最大時99.5)%と高く、19床では限界があることを考慮。今後も循環器疾患の患者が30年ごろをピークに増え続け、少なくとも45年までは現在よりも多くの入院患者が存在することも予測した。神栖、鹿嶋、潮来3市で発生した心疾患と脳卒中の救急搬送件数のうち、同クリニックへの平均搬送時間よりも長い時間を要した件数が年間約230件あったことなども勘案され、4床の増床が認められた。 同クリニックは病棟を拡大。新たに手術室を2室増設するなどした。これによって救急隊からのホットラインに原則24時間365日対応できる体制が整った。 新病棟建設に当たって、市は医療機関の機能分化や連携促進が図られるとして、23年度から年間8000万円ずつを交付。今後も27年度まで同額を交付する方針だ。 黄理事長はこれまで搬送途中で命を落としてしまった患者などがいたことなどを踏まえ、「病院化によって救命できる人が増える。医師も集まり、高い能力を発揮できる」と強調した。今後に向けては「実績を積み重ね、さらなる増床を図っていきたい」とした。
茨城新聞社