話題の新人バンドがアニメ『妻、小学生になる。』の主題歌を担当 「いつか鳥肌が立つような曲を作りたい」
マカロニえんぴつら所属のmurffin discspachaeからデビューしたpachae
テレビアニメ『妻、小学生になる。』が、今月6日からTOKYO MXなどで放送されている。オープニング主題歌『アイノリユニオン』を書き下ろしたのは、ネクストブレイクの呼び声が高い男女3人組ポップスバンド・pachae(パチェ)だ。2020年、マカロニえんぴつなどが所属するmurffin discsのオーディションで準グランプリを獲得し、今年4月にメジャーデビュー。「1度聴いたらクセになる」とされる楽曲と高度な演奏技術が特徴で、ファンを増やしている。ENCOUNTでは、そんな3人をインタビュー。結成から現在まで聞いた。(取材・文=福嶋剛) 【動画】ドラマ『妻、小学生になる。』小学生役の毎田暖乃がダンスを披露した『アイノリユニオン』MV バンドの楽曲を手掛けるのはボーカル、ギターの音山大亮(おとやま・だいすけ)。小学生の頃からピアノを弾き、ゲーム音楽に夢中な少年だった。 音山「ゲーム音楽にハマって自分なりの楽譜本を何冊も作って弾いていました。中学の頃にYouTuberが出てきて、オリジナルみたいなんをピアノで作ったり、パソコン使ってDTM(デスクトップミュージック)とかしてました」 音山が本格的にギターを始めたのは高校時代。組んだバンドにギターがいなかったことで弾き始めたという。 音山「途中からボカロにハマって、どんどん難しいテクニックに挑戦していきました。大学に入ると、今度はジャズとかフュージョンみたいな音楽をやり始めたり。そんなふうに僕はギター小僧でもバンドマンでもないし、憧れのアーティストもいない。J-POPから洋楽までいろんな音楽を聴いてましたけど、これっていう音楽ルーツを持っていなかったんです」 ギターのバンバは、ロック好きの父親の影響が大きかったという。 バンバ「父親がアイアン・メイデンとかメタル系の音楽をたくさん聴いていたので、僕も小っちゃい頃から家でずっと聴かされていました。マリリン・マンソンのCDジャケットが怖すぎてトラウマになった思い出もあります(笑)。自分で聴くようになったのは小2くらい。andymoriさんの『革命』です。中2で初めてエレキギターを買って、最初にコピーしたのは、やっぱり、アイアン・メイデンの『The Trooper』(笑)。その頃から軽音部に入ってバンドを始めてOASIS、GOING UNDER GROUND、フジファブリックとかのコピーをやっていました」 キーボードのさなえは、最近までエレクトーンのデモンストレーターとして活動を続けていた。 さなえ「私は3歳くらいからピアノとエレクトーンを習い始めて、小、中は学校で合唱とか卒業式にピアノ伴奏をする担当でした。その後、エレクトーンをずっと続けて、大学を卒業した時、小さい頃からの夢だったヤマハのデモンストレーターになりました。ポップスからジャズまでいろんなジャンルの演奏をしていて、このバンドに出会ってからも最近までお仕事を続けていました」 バンド結成は、音山が中心となってメンバーを集めていった。 音山「このバンドを組むまでは、1人で曲を作っていました。根拠はないですけど、自分の曲には自信があったので実際にステージで披露したくてメンバーを探し始めました。僕の曲ってムズイ曲ばかりなんで、『単純に仲が良いだけじゃできへん』と思い、演奏が上手い人を探しました。それで前から知っていたさなえと辞めたメンバーの後輩のバンバに声を掛けました」 バンバ「僕は、ただの暇人だったんでね(笑)。先輩に誘われてすぐに、『楽しそうやん。やろう』みたいな軽いノリでした」 さなえ「音楽の視野を広げたくて『挑戦したい』と返答しました。初めは仕事とバンドを両立できるかちょっと不安でしたが、それよりバンドで演奏できると思い、うれしかったのを覚えています」 音山「ということで、最終的にこの3人がメンバーとして残ったという感じです」 pachae(パチェ)というバンド名は、音山が名付けた。由来を聞くと「造語です」と返した。 音山「ぱ行を頭文字にした名前にすると良いみたいなゲン担ぎで『パチェ』にしました。でもカタカナで『パチェ』って書くと、韓国語でネギを指すらしくて、検索してもネギしか出てこないからスペルを変えてpachaeにしました」 さなえ「ネギには勝てないな」 音山「勝ったら勝ったで、ネギにとっても迷惑やからな(笑)」 2020年8月にメンバーが集まり、9月から地元大阪のスタジオに入った。 音山「何しろ12月に初ライブが決まっていたので『残り3か月で何とかしなくちゃ』って必死でした」 さなえ「エレクトーンで全身を使っていろんなパートを演奏しているので、しばらくそのクセが抜けなくて、鍵盤を弾きながら勝手に使っていない足が動いちゃったりして(笑)。でも、『新しい音楽に出会えた』というよろこびで毎日が楽しかったです」 バンバ「僕はもともと良く知っているドラムの先輩に誘ってもらったので、特にこのバンドでも気負うこともなく、自分の演奏に徹しながら、それを徐々に進化させていった感じです」 1度聴いたらクセになるpachaeのサウンドの作り方について、音山が語った。 音山「僕がpachaeの曲作りで大事にしているのは、ほんまに考えて作り込むやり方を取るか、感覚的に気持ち良さを優先するかの2択で考えてます。意外とこの中途半端な中間に行ってしまうと、だいたい違和感が残ってダサくなるって分かったんです。そこは気をつけています」 リスナーとしての視点も音山は大切にしている。 音山「誰かの曲を聴いて鳥肌が立つみたいなことってあるじゃないですか。自分の曲で最も自信のある曲を100点だとしたら鳥肌が立つ他の人の曲は僕の中では120点。自分の曲で鳥肌が立つのは無理やと分かっていても、いつか120点の鳥肌が立つような瞬間を味わいたいんです。だから、作った曲はできる限り俯瞰(ふかん)して聴いてます。ほんま人生で一度だけでもいいから記憶を忘れて聴いてみたい(笑)」