<古畑任三郎>桃井かおり“たか子”が猛ダッシュして女性を撲殺後「痛い?」…第11話レビュー
三谷幸喜脚本の「古畑任三郎」シリーズは、田村正和演じる主人公・古畑任三郎が、完全犯罪をもくろむ犯人たちの難解なトリックを卓越した推理力で解いていく、ミステリードラマの金字塔。2024年は初回放送から30周年の節目ということもあり、フジテレビで一挙再放送されたり、FOD・TVerで開催中の「#ドラ活 浸れ、超自分的ドラマ生活。」で一気見作品に選ばれたりと、今作の魅力を振り返る機会が少なくない。桃井かおりがラジオDJの殺人犯役を演じた第1シリーズの第11話を紹介する。(以下、ネタバレが含まれます) 【写真】「古畑任三郎 第3シリーズ」(左から)石井正則、田村正和、西村まさ彦 ■たか子は恋人を奪われてラジオ本番中に罪を犯す 第11話「さよなら、DJ」は、人気歌手の中浦たか子(桃井かおり)が、付き人のエリ子(八木小織)を殺してしまう回。 たか子の恋人だった作曲家をエリ子が奪った。たか子は、担当する深夜番組の生放送中に合間を見つけてスタジオを抜け出し、ラジオ局の駐車場で待っていたエリ子をスパナで殴りつけた。何食わぬ顔してスタジオに戻り、放送を続けるたか子。 古畑(田村正和)と部下の今泉(西村まさ彦)は、たか子の依頼を受けて、ラジオ局に来ていた。このところ次々に脅迫状が舞い込むため、古畑がたか子の身辺を警護していたのだ。そんなとき、エリ子の死体が発見される。捜査に乗り出す古畑。たか子は、エリ子が自分の身代わりに殺されたように装う。だが、古畑は現場に落ちていたタバコの吸殻を見て考え込む。たか子がスタジオを抜けたのは、わずか3分だけ。今泉がどんなに走ってみても、現場の往復に7分はかかる。古畑はたか子の犯罪を見破るために様々なケースを想像した。 ■洋楽サウンズに古畑の歌声…ラジオという空間を巧みに使ったハイセンス回 今回の犯行に使える時間はたか子のトークコーナーが途切れる3分間のみ。ラジオブースを抜け出し、履いていたヒールを脱いで全力の猛ダッシュをするたか子の場面は古畑シリーズの名シーンの一つといえるだろう。たか子自身がラジオで流した軽やかなBGM「サン・トワ・マミー」がかかる中で女の恨みと憎しみに満ちた殺害行為が映し出され、ドラマチックで緊張感に満ちたシーンである。その後、今泉が古畑に何度も走らされるのはとても気の毒だが…。 たか子は、ラジオでケタケタ笑いながら明るく話す姿と、オフの時にけだるそうにスタッフに甘えながら話すときのギャップが魅力的な女性。ウェービーなロングヘアーをいじりながら古畑の話をはぐらかしたり、エリ子を殴打した直後に「痛い?」と話しかけるなど、殺人犯らしからぬマイペースぶりを貫く。 第11話の演出はラジオを使ったBGMがたくさん流れるのがとてもおしゃれだ。エルビス・プレスリー「ハートブレイク・ホテル」やビーチボーイズ「サーファー・ガール」など往年の名曲が流れるうちに、古畑がどんどんたか子を責めていき自白まで追い込んでいく。たか子が犯人である証拠が欲しい古畑が、越路吹雪「ラストダンスは私に」を歌ってテープに吹き込むのだが、その古畑の貴重な歌声が聴けただけでも得したなと思える回である。