数十億ドル運用で大失敗したクオンツ投資家が復活、今度は小規模で
(ブルームバーグ): アジア地域のクオンツヘッジファンドの先駆けだった「マッコーリー・アジアン・アルファ・ファンド」を5年前に閉鎖したベテラン・ファンドマネジャーのニック・バード氏が戻ってきた。
同ファンドの運用資産はピーク時に20億ドル(約3000億円)に上ったが、バード氏の新しいファンドはより賢く、そして意図的にかなり小さい規模になるという。
バード氏は現在、OQファンズ・マネジメントを率いている。2020年6月に香港で、1500万ドルの自己資金でスタートした同社は現在、運用資産額が5億ドル程度にまで拡大しているが、マッコーリーで期待外れのリターンをもたらし、最終的にファンド閉鎖に至ったような行き過ぎた拡大は避ける決意だ。
同氏の新ファンドは、運用開始から今年2月までの年率リターンがプラス12%と、ユーリカヘッジのアジア株式ヘッジファンド指数を見事にアウトパフォームしているが、資産の上限は7億5000万ドル程度とする見通し。今注目している投資手法の一つは、本土と香港の取引所に上場している中国株の価格差を利用するもので、最近では過去15年間で最も差が拡大しており、中国のテクノロジー株のバリュエーションが「不当に安い」とみてもいるという。
「これは過去の失敗から学び、物事を正しく行うチャンスだった」とバード氏(57)は言う。同ファンドは中国のクオンツに対する規制強化の影響を直接受けてはいない。
ただ、マルチ戦略を駆使し複数の運用者を抱える大手が世界のヘッジファンド業界への新規資金流入の大半を吸収し、アジアファンドへの投資意欲が冷え込んでいる状況で、独自のファンドを立ち上げるのは容易ではなく、「昔よりずっと難しくなっている」という。
オーストラリア出身で、シドニー大学の元航空工学科トップの息子であるバード氏は、10歳のときに初めて株を買った。1990年代半ばのマッコーリーでのキャリアの形成期は、アジアのクオンツファクターの研究に費やした。同氏が2005年に立ち上げたマッコーリー・アジアン・アルファ・ファンドは、数十億ドル規模の数少ないアジア特化ヘッジファンドの一つで、コンピューターモデルを銘柄選びに活用していた。