アップルCEOもう1つの重責、ナイキの再建を取締役として支援
ナイキ取締役に就任した2005年、クック氏はまだアップルの最高執行責任者(COO)で、スティーブ・ジョブズ氏の右腕だった。両社は当時、初の提携に近づいていた。ナイキのスニーカーのソールに歩数計センサーを組み込み、フィットネスデータをiPodに送信するというものだった。ナイキは高い技術的な専門知識を持つクック氏を「大きな財産」だとして手放しで歓迎した。
アップルはその頃、iPhoneの正式な開発を始めたばかりで、巨大企業へと変貌する直前だった。クック氏はCOOとして、提携先やサプライヤー、Mac部門、顧客サービスおよび支援といった日常業務を統括。ジョブズ氏が医療休暇に入ったり出たりする中で、アップルを支えていた。2011年8月のジョブズ氏退任に伴い、クック氏はCEOに就任する。
2016年には、当時70代後半だったナイト氏がナイキの会長を退任。シューズデザイナーで生え抜きのパーカー氏に会長の座を譲った。その後、クック氏は独立取締役としてナイキへの関与を深め、現在では同社の報酬委員会の責任者も務めている。
足元ではアップルとナイキはApple Watchで緊密な提携関係を構築している。2016年以降、共同ブランドモデルを展開。ナイキはまた、独自のフィットネス機能をApple Watchユーザー向けに提供している。クック氏はApple Watchの誕生前、ウエアラブル端末の先駆けとなるナイキのフィットネス追跡デバイス「FuelBand」ユーザーとして知られていた。同製品は14年のApple Watch発表の数カ月前に販売終了となった。
クック氏はキャリアを積み重ねるのに伴い、ナイト氏と一段と親密な関係を築くようになる。ナイト氏はスタンフォード大学での講演で、クック氏を「協調性のある素晴らしいリーダー」と呼んでいる。
ナイキ社員は、オレゴン州ビーバートンにある本社でクック氏の姿を目にしている。小売店舗のデザインについて時折提案し、市場を飽和状態にするのを避けるため中核製品に焦点を当てるよう助言しているという。これはジョブズ、クック両氏の下で、アップルが掲げてきた長期戦略に沿ったものだ。当然ながら、クック氏はナイキのオンライン業務についても、テクノロジーの面から意見を提供している。