不登校に先手 SOS見逃さない 福島県会津美里町、支援へ独自システム 出欠日数や保健室利用状況分析
子どもたちの心のSOSを見逃さない―。福島県会津美里町は、学校になじめない可能性のある小中学生をいち早く見つけ、不登校を未然に防ぐ独自の対策に乗り出した。児童・生徒の生活や健康のデータを基に判定基準を設け、支援が必要なケースを把握する。大学の専門家らと連携し、個別の事情に合わせて声をかけ、自宅を訪れて不安を取り除く。全国や県内で不登校者数が増える中、子どもの心に寄り添う。 こども家庭庁の「こどもデータ連携実証事業」に今年度、東北地方の自治体で唯一、採択されてシステム構築の支援を受けている。 町や町教委、学校が保有している出欠日数や保健室の利用状況、成績、子育て支援記録、健康記録などを使う。学校不適応を起こした前後にどのようなデータの変化があったのかを分析し、リスクを判定する基準の設定を目指している。 さらに子どもたちが通学日の1日2回、タブレットで学校に報告している気分や体調、家族関係などの変化のデータを各種データと掛け合わせて判断する。
支援が必要と判定された場合、町と学校、専門家が対策を検討する。教員が対象の子どもの自己肯定感を高めるために声かけなどをする。1月に試験的にリスク判定した。今月中にも本格的な支援を講じる。 年間30日以上欠席した不登校の小中学生は近年、増加している。県内の2022(令和4)年度は過去最多の3546人で、前年度より628人増加した。町はこれまでの教職員の経験に加えて、新たなデータ分析を取り入れる必要があるとみて、対策を模索していた。高田中の坂口伸校長は「教育委員会と学校が生徒の情報を共有し、チームとして子どもを支援する取り組みになる」と期待した。 こども家庭庁は会津美里町をはじめ全国14自治体の実証事業で得られた成果と課題を検証し、全国展開を目指している。町教委の小野泰弘主幹兼指導主事は「子どもや家庭を取り巻く環境は複雑化している。危機意識を高め、子どもの心の変化に素早く気付いてあげることが重要だ」と強調した。
小学生の2人の子どもを育てている町内の40代男性は「さまざまな理由で学校に行きたがらない子どもも多い。精神的なケアは一層必要になってくるはず」と語った。 ■愛知教育大の鈴木准教授「子どもたちの心の声を受け止める仕組みを」 会津美里町の取り組みに協力している愛知教育大の鈴木美樹江准教授は、苦しむ子どもの早期発見が適切な支援に結びつき、成長につながると指摘している。「行政の縦割りで分散していたデータを集めて分析し、子どもたちの見逃されていた心の声をしっかり受け止められる仕組みを構築する必要がある」としている。