小麦「さぬきの夢」使用を埼玉県内で唯一認定「うどん屋基蔵」甘だれ牛すじぶっかけ評判 ビバ!続・うどん共和国
香川県で開発されたうどん用小麦「さぬきの夢」を入手できる埼玉県唯一の協力店に認定されている。丁寧なうどん作りで現地の協会による厳しい審査を突破したことで権利を獲得できたとあって、本場顔負けのさぬきうどんが味わえると評判だ。 【写真】手打ちうどんを丁寧に大鍋に入れる店主の山崎貴広さん 店主の山崎貴広さん(46)はさぬきの夢について、「粘り気があって加工しやすい外国産の小麦と違い、さぬきの夢は丁寧な過程を経ないと、粉がまとまってくれない」と苦労を語る。だが、えぐみの少なさ、つやつやした色感、ほんのりした甘さは何ものにも代え難い。 入り口の横に柵があり、北海道犬がいる。だしに使う煮干しの「伊吹いりこ煮干し」にちなんで名付けた副店長犬の「いぶき」。店内に入り「甘だれ牛すじぶっかけうどん」の冷200グラム(1000円)を注文する。うどんの歯応えはコシがあり、麺の表面が輝いている。太いながらも、さっぱりと甘い味わいだ。 具に牛すじを使ったのは「みなさん、肉好きでしょう。牛すじを使ったお店を関東で見なかったので特徴を出したかった」。甘だれをかけて再加熱すると、味が染みておいしくなり、現在の形になった。冷も温も、共通の汁には、干しシイタケ、煮干し、節各種など8種類の材料を使って、だしをとっている。 そして、他のうどん屋ではめったに見ることがないのが、「淡麗煮干中華そば」(950円)と「濃厚煮干中華そば」(1000円)の2つのラーメン。 「新型コロナウイルス禍のとき、『何か新しい需要を作らなければ』と思い、(うどんで)煮干しを使うから、煮干しラーメンが作れるのではないか」との発想からだ。牛すじを炊いたスープを使い、レモンを入れ、味を「三変」ぐらいさせ、飽きないようにしている。 父親の会社を手伝い司法書士の資格を取る勉強をしていた。しかし、突然、体を壊し入院。退院したときに食べたうどんに刺激され「健康的なうどん」を作りたいと思った。奈良の修験道をする寺に半年ほどいて、開店前に吹く「ほら貝」は、そのとき覚え、邪気を払う意味を込め吹く。 店内には児童養護施設への募金の箱がある。オートバイが好きで、仲間を通じて千葉県内の施設を知ることになった。うどん屋になったのも、病気で半身が不自由な母親に「日本一のうどん屋になる」と誇りに思ってもらいたいから。心は優しく味に厳しい山崎さんの性格が味に出ている。(昌林龍一)