英語は「決まり文句」が8割! 第二言語習得の専門家が説く、定型表現を学ぶ「8つの利点」
なぜ英単語と文法を一生懸命勉強しても英語を使いこなせないのか? どのような英語学習が効果的なのか? いま注目を集めているのが、「定型表現」だ。文法と単語を学ぶだけでは身につかない「決まり文句」を知ることで、英語力を飛躍的に高めることができるだろう。 【写真】日本人だけが「英語が苦手」な意外な理由って…? 定型表現はなぜ重要で、どのような種類があり、どう学習するのがいいのか? 『英語は決まり文句が8割 今日から役立つ「定型表現」学習法』では、そのすべてをわかりやすく解説している。
母語話者の言葉の多くが実は定型表現
文法と単語のどちらにも属さない定型表現は、雑多なものとして切り捨てられ、英語教育(=実践)においても、言語学(=理論)においても、長らく軽視されてきました。 しかし、技術が進歩し、大量のテキストをコンピュータで分析できるようになると、書き言葉・話し言葉の多くが、実は定型表現で構成されていることが明らかになってきました。母語話者の書いたり話したりした言葉のうち、5~8割程度が定型表現で構成されているという推計もあります(*1)。 スマホの予測変換を使って文章を書いていると、予想外に適切な表現が提案されるので驚いてしまうことがあります。我々の用いる言葉の多くは定型表現で構成されるため、産出された語句の後にどのような語が続くかを高い精度で予測できるのです。
定型表現を学習する「8つの利点」
定型表現を使うことには多くの利点があります。英語学習者である我々も、定型表現を使うことで多くのメリットを享受できます。詳しくは『英語は決まり文句が8割』第1章で触れますが、以下のような8つの利点が指摘されています。 (1)言語使用の正確性が上がる 定型表現の知識があると、自分の言いたいことを相手に正確に伝え、さらに相手のメッセージを正確に理解できるようになります。 (2)言語使用の流暢性(=スピード)が上がる 定型表現をつなぎ合わせることは、文を一から構築するよりも脳に負担がかかりません。そのため、文章を淀みなく流暢に生み出したり、理解したりできるようになります。 (3)言語を使って様々な機能を遂行できるようになる 定型表現の中には、「依頼する」「依頼を断る」「助言する」「感謝する」「謝罪する」など、特定の機能と結びついたものが多くあります。これらの定型表現を用いることで、効果的にメッセージを伝えたり、理解したりできます。 (4)状況にあった適切な言語を使用できるようになる 定型表現を使いこなすことで、話している相手や状況に応じた適切な言語使用が可能になります。結果的に、良好な人間関係の維持・構築が期待できます。 (5)すでに知っている単語への知識が深まる 定型表現を学ぶことで、すでに知っている単語に関するより正確な理解へと結びつきます。結果的に、新しい単語を学ばずとも、既存の単語を組み合わせるだけで、英語における理解力や表現力を高められます。定型表現の習得は、コスパ(コストパフォーマンス、費用対効果)が良い学習法です。 (6)未知の単語を覚えるきっかけとなる 新しい単語を単独で学ぶよりも、定型表現の中で学んだ方が、記憶に定着しやすいことが研究から示唆されています。つまり、定型表現を学ぶことで、すでに知っている単語を使いこなす能力が伸びるだけでなく、今まで出会ったことがない単語を覚えるきっかけにもなります。 (7)文法知識の習得が促進される 定型表現を覚えることには、単語の知識が増えるだけでなく、文法知識が増えるという利点もあります。例えば、give me a break(かんべんしてくれ、うそも休み休み言え)、give it some time(冷静に考える)、give it another try(もう一度やってみる)、drop ~ a line(~に一筆書き送る)など、第4文型(SVOO)をとる複数の定型表現に触れることで、第4文型という文法事項への知識が深まることが期待できます。 (8)ある共同体(コミュニティ)への帰属を示す 学術・ビジネス・法律・医療など、特定の分野で頻繁に用いられる定型表現があります。これらの定型表現を使いこなすことで、ある共同体の正統なメンバーであるというアイデンティティを示すことができます。結果的に、職業上のコミュニティにおいて英語を使って活躍することができ、社会的なコミュニティに溶け込んで円滑な人間関係を築けます。