日本女子タイトルの5階級創設で低迷の女子ボクシング界は変わるか?
現在、日本には世界王者が5人いて17度防衛を続けているWBC世界女子アトム級王者の小関桃(青木)や、42歳のベテランの4階級王者、現WBA世界女子フライ級王者の藤岡奈穂子(竹原&畑山)ら“世界一”にふさわしい優れたテクニックとレベルを持った世界王者もいる。 だが、世界戦は各団体への承認料やオフィシャル、ジャッジを呼ぶ経費などもかさみ、興行として成立しにくい現状がある。ヒエラルキーのトップがその状態では、若手育成につながらず、モデルボクサーとして高野が話題を集めてテレビやCM出演、グラビアなどで盛り上げても業界全体の底上げにはつながらなかった。 日本女子タイトルが新設されると、経費の面でも抑えられ、プロモーター側も興行を行いやすくなり、加えて6回戦であることから東洋タイトルの8回戦や世界戦の10回戦までのレベルにない選手にとって登竜門的な立ち位置のベルトとなり出場機会は確実に増える。日本タイトルから世界へというステップが確立されていけば、ミスマッチを減らすことにもつながる。 かつては、協会主催の女子ボクシングイベントがあったが、5人の王者が勢ぞろいする女子版のチャンピオンカーニバルを開催して話題を集めても面白いだろう。もう一度、10年前の女子プロ化元年のときに生まれたようなムーブメントを起こす可能性もある。世界王者と日本王者の兼任はルール上、無理になっているが、元世界王者を日本王者に挑戦させるような世界レベル並みの試合を見せる試みがあってもいいと思う。 ただ、現在のランキングの挑戦資格者がアトム級、ミニフライ級が5人で、注目のバンタム級は、高野、吉田以外には、2人。フェザー級に至っては、まだ今回の王座を争う2人だけで、あと1勝で資格を得るボクサーも2人しかいないなど、まだまだ選手層が薄いのも現状。新設の日本タイトル戦で盛り上げながら、挑戦者がいなくなる前に新しいボクサーを掘り起こしていく工夫を積極的に仕掛けていかねば、選手不足で立ち行かなくなった日本ヘビー級の二の舞になる危険性もある。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)