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---------- 2008年9月、アメリカでサブプライムローン(低所得者向けの住宅ローン)が崩壊し、大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻した。世界金融危機「リーマン・ショック」の直前、リーマン・ブラザーズから総額371億円にのぼる莫大なカネを騙し取った凄腕詐欺師(懲役15年)がいる。齋藤栄功だ。 【本人写真】批判は覚悟している…リーマンから371億円を騙し取り、懲役15年 「リーマン・ショックの引き金を引いた男」齋藤の回顧録『リーマンの牢獄』が発売され、完売店が続出している。2024年最注目の巨弾ノンフィクションに、知られざる現代史の裏側が赤裸々に記録される。(文中敬称略) ----------

一日あたりの引き出し限度額がないシティバンクのATM

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　クレディ・スイスNY支店の6000万円を口座凍結されてしまった齋藤栄功(しげのり)は、次第に追い詰められていく。逃亡先の香港でなんとか現金を手に入れるため、リモート操作によって齋藤は日本に指示を出した。その手法はウルトラCだ。 　〈「もとはみずほ銀行丸の内支店に投資信託として預けていたもの【※齋藤の裏ガネ3000万円】ですが、それを解約してシティバンク大手町に振り込み、一部をシティバンク香港へ送金するとともに、残る全額を日本のATM(現金自動預け払い機)からおろしてもらったんです」 　――えっ、3000万円もATMでおろせるんですか。 　「シティのATMには一日あたりの限度額がないんです。問題はシティのバンクカードが香港の僕の手元にあったことです。そこで香港から帰国する美林さん 【※赤坂の韓国クラブ「ポンジュ」のホステス朴美林】にカード入りの封筒を託し、六本木のホテルのレセプションに預けてもらいました。彼女は封筒の中身を知りません。示し合わせたとおり、後で封筒を受け取ったのは黒崎氏【※齋藤が緊密に連絡を取り合っていた投資顧問会社社長の黒崎勉】です。現金化して地下銀行で送ってもらう手はずでした。 　ところが彼はATM引き出し役を僕の前妻に任せて、監視カメラに映らないようゲンナマの包みだけ別の場所で渡されたという案配です。電話をつなぎっ放しにして僕が香港から指図し、検察の取り調べには口を割らなかったのに、後になって黒崎氏は授受などなかったような顔をしています。(略)香港潜伏は、すべてが砂上の楼閣の上に築かれた幻想でした」〉(『リーマンの牢獄』314～315ページ) 　頼みの綱だった3000万円の裏ガネは、齋藤の海外逃亡生活を支援しているかのように見えた詐欺師・黒崎勉にネコババされてしまったのだ。