【自分らしく生きる】玄理「而今」今この瞬間の先に待つささやかな幸せ
1999年10月1日にスタートした「大手小町」は今年25周年を迎えました。年齢、性別、国籍などにとらわれず「自分らしく生きる」ためのヒントやエールを、「お悩み相談」や「コラム＆エッセー」の執筆陣が寄せてくれました。 【写真】玄理が髪を大胆にカット！ ◇ ◇ ◇ フィルムカメラが好きです。映画やドラマの撮影などで海外を訪れ、印象的な時間を見つけると、シャッターを切ります。大手小町でつづっているエッセーでも、そんな風に撮影したお気に入りの写真をご紹介しています。 カメラ好きの友人と会った時、「而今」という言葉を教わりました。「にこん」とも「じこん」とも読む禅語で、「まさにこの時」「今この瞬間を生きる」「永遠の現在」という意味があるそうです。 ちなみに、私が愛用しているカメラのうち一つはニコンのもの。カメラって、まさに「今この瞬間」を写し取り、永遠に残すもの。ニコンの社名の由来はまた違うそうなのですが、何だかすてきな偶然の一致を感じます。 「而今」は、自分らしく生きることにもつながるのではないでしょうか。 海外の撮影では、慣れないこともたくさんあります。それでも、今この場所で、このスタッフや共演者の方々と一つの作品を作るということは、人生でもう二度と味わうことはない――そう考えると、今この瞬間に集中し、今を生きることが何より大切なんだ、と気づくのです。 先日、雑誌の企画で冨永愛さんと対談しました。40代になってようやく、「そこそこ幸せ」だと思えるようになった、と話していた愛さん。そこそこ幸せ。いい言葉だと思いませんか？ 2年前に韓国の実家で家族と撮った写真をふと見ると、今は亡き大切な人がそこには写っている。この写真を撮った時、当時は気づかなかったけどきっと私は幸せだった。でも、今の私が不幸かというと、そんなことはなくて、その時にはなかった他のものを、今の私は手にしている。きっと、何年後かに振り返った今の私も「そこそこ幸せ」なんじゃないだろうか。朝起きたらワンちゃんがかわいいとか、ちょっと涼しくなったな、とか、そんなささやかな「幸せ」に目を向けて。 自分らしく生きるって、どういうことなのか。難しいですよね。私が今、頭の中に浮かんだのは、「ジャッジしない」ということ。気分が良いこともあれば、悪いこともある。自己肯定感が高まる時、どーんと低くなる時。どんな自分も丸ごと受け入れてあげられたら、楽になれそうな気がします。 これは、実は俳優としても同じなのです。いろいろな役をいただきますが、どんな役であっても、私はその役を「いい」「悪い」とジャッジしないようにしています。演じる俳優は、その役の最大の理解者でなければいけないから、役のすべてを受け入れる。自分をジャッジせず、もちろん他人のこともジャッジしない。難しいけど、それが自分らしく、少し肩の力を抜いて生きることにもつながるのではないでしょうか。 父が亡くなったことをエッセーに書いた時、混乱していた気持ちを整理することができました。誰かと話したかったけど、誰と話したらいいのか分からなかった。私と同じような経験をした誰かの慰めになったのならいいな。そんな思いも込めました。 仕事のこと、現場の裏話、旅、そしてプライベートなこと。これからもつづっていきますので、読者のみなさま、どうぞよろしくお願いいたします。そして、大手小町25周年、おめでとうございます。私に書く場所を与えてくれて、ありがとうございます。（俳優 玄理）
