石原さとみ、“ヒーロー”を“人間”に見せる演技力 『アンナチュラル』から『Destiny』まで
石原さとみが演じる主人公には“必死さ”が滲む
石原は軽々と仕事をやってのけるような“ヒーロー”を演じはしない。“ヒーロー”に見えるような人の、迷いや挫折、泥臭い部分もしっかりと見せて“人間”を演じようとするのだ。言葉に詰まったり、何かを堪えるために目を閉じたり……。些細な仕草からそれを感じ取ることができる。何にも揺らがずに自分を信じて行動できる人はカッコいいし、できれば自分もそうでありたいと誰しもが願うだろう。だけど、現実にはなかなかできることではない。そんな中で、自分を叱咤激励して奮い立たせながら、妥協せず、目指すところに向かって歩みを止めようとしない奏やミコト。そして彼女たちを演じる石原の姿には、いつも勇気づけられるものがある。この芯の強さから生まれる“必死さ”が、私たちが石原の演技に魅了される理由のひとつになっているのではないだろうか。 『Destiny』の奏には、父やカオリのこと以外に、心穏やかになれない理由がある。かつての恋人・真樹の存在だ。元々、愛想を尽かして別れたわけではないからこそ、また惹かれあってしまったふたり。いけないとはわかっていても、止められない衝動がある。これもまた“人間”らしいといえるが、その先に見える道は明るくはない。これから奏はどうなってしまうのか。ますます目が離せない。
久保田ひかる