率直に聞く あなたはなぜ「クルマ」が好きなのか?
クルマ業界の視点と一般の現実
若者のクルマ離れが進んでいる――。もう聞き飽きたフレーズである。日本全体を見れば確かにそうかもしれない。しかし、筆者(泉圭一郎、自動車業界ウォッチャー)の周りの人たちはそうではない気がする。 【画像】えっ…! これが日本の「運転免許者数」です(計18枚) 18歳になるとすぐに運転免許を取得する人も多いし、マイカーを持っていなくても実家のクルマを喜々として運転しているケースも多いし、SNSでも関連投稿は多い。ただ、情報源として雑誌を求める人が減っているのではないか、とは感じる。 さて、若者のクルマ離れは本当に進んでいるのだろうか。だとしたら、中高年はどうなのか。この問題を振り返ってみたい。
自動車販売、増減の波
まず、現在日本で販売されている新車と中古車の台数を確認してみよう。 普通車の販売統計データを公表している日本自動車販売協会連合会と、同じく軽自動車の販売統計データを公表している全国軽自動車協会連合会によると、2024年2月のデータは、新車が34万4820台、中古車は55万1691台だった。 前者は前年同月比80.8%の大幅減となったが、これはコロナ禍にともなう生産遅れの影響である。一方、中古車販売台数は前年同月比107%と微増で、新車を買えない層が高年式の中古車を選んだことがうかがえる。 クルマの販売台数は減少傾向にあるが、年ごとのデータを見ると、増減している。これが日本の自動車市場の現状なのである。
MT車人気、高年層が選ぶ理由
では、日本人は世代別にどのようなクルマを好むのだろうか。明確なデータがあるわけではないので、あくまで筆者の実体験とインターネットなどによる個人的な印象であることをお断りしておく。 第一のグループは高年層である。年齢的には60代以上である。いわゆるバブル時代を30代で経験した世代であり、クルマに対する思い入れもそれなりに深い。そのため、“ついの1台”としてスポーツカーを選ぶことが多い。この世代に人気の高いクルマといえば、マツダ・ロードスターにほかならない。 現行モデル、いわゆるNDロードスターは2015年に発売された。発売から約9年が経過している。それなのに、販売台数が減る気配はない。むしろ、近年は販売台数が伸びているといっていい。具体的な数字を挙げると、2023年10月までの販売台数は約5万6000台、2015年から2023年までで最も売れた年と台数は2022年の9567台である。 ちなみに、現時点で判明しているユーザーの年齢分布は、50代以上が約25%となっている。これを40代以上に広げると70%を超える。まさに中高年層に人気のクルマということになる。 また、ソフトトップモデルの8割以上がMT車であり、AT車が増えているリトラクタブル・ハードトップモデルでも約半数がMT車である。このような内容は他の車種ではほとんど見られない。