「奇跡のぶなしめじ」なるか 能登半島地震で生き残った菌床、うまみ成分が通常の1.5倍に 試験重ね販売目指す
カットブナシメジ生産大手のミスズライフ(長野県飯綱町)が、能登半島地震で被災した能登工場(石川県穴水町)で生き残ったブナシメジ菌床の「復活プロジェクト」を進めている。栽培瓶が倒れるなどの被害を受けたが、菌糸が死滅しなかった菌床もあり、被災に伴って通常より大幅に長く培養された結果、キノコのうまみ成分が高まる試験値が出た。「奇跡のぶなしめじ」(仮称)として販売できるか、さらに試験をして判断する。 【写真比較】通常より大ぶりな長期培養のブナシメジ
同社によると、能登工場は栽培瓶約280万本が散乱し、現在も10月の出荷再開を目指して復旧作業を進めている。散乱した培養中の瓶のうち、ふたが開いてしまったものは乾燥して菌糸が死滅。一方、工場はほとんど停電しなかったこともあり、倒れなかったり、倒れてもふたが開かなかったりした瓶では菌糸が生き残っていたという。こうした瓶は約120万本あり、培養を進めることにした。
ブナシメジは培地を詰めた瓶に菌を植え付けて培養した後、表面を削って刺激する「菌掻(か)き」をして芽を形成させ、生育させる。同社では培養期間は通常70日。一方、5月に150~180日培養が進んだ菌床を飯綱工場(長野県信濃町)に運んで菌掻きすると、無事に育った。
このブナシメジは通常より大ぶりで、うまみも向上した。県工業技術総合センター(長野市)での試験でも、うまみ成分のグルタミン酸やアラニンが通常の1・5倍程度に高まるといった結果が出た。
現在は2回目の試験として210~240日培養した菌床を飯綱工場で生育しており、今月中旬に収穫する予定。大きさや味などに問題がないか確かめ、販売を検討する。
小林光一執行役員生産本部長(63)は「おいしいし、震災を生き残ったものなので、できれば食べてもらいたい」と期待。販売すると決めた場合、引き合いのある店に供給したいと考えている。