髙石あかり、朝ドラ出演後のキャリアは? 代表作となった『ベビわる』シリーズでの功績
髙石あかりが『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』でみせた“怒り”の演技
筆者も昔、その強引すぎる営業方法とブラックな社風で悪名高かった、ある通信会社の系列店でアルバイトをしていたことがある(すぐに辞めた)。その会社と「オフィス向日葵」の雰囲気があまりにも似ていたため、当時を思い出して胃が痛くなった。その会社も、「お疲れ様です」は「お元気様です」だった。ついでに、「人材」は「人財」だったし「仕事」は「志事」だったし「最高」は「最幸」だった。 殺意を嚙み殺し、ストレスを溜め込みながらも孤軍奮闘するちさと。そんなちさとを見て、部長・山下(後藤剛範)が、仕事のやり方をレクチャーする。なぜ「オフィス向日葵」が、これだけ仕事を取ってこれたのか。その方法は、「顧客にデマを吹き込むことで無実の人間に恨みを抱かせ、殺しを依頼させる」というものだった。 “ちさまひ”と心が通いかけた『2ベイビー』の神村兄弟も、ちさと行きつけの中華屋の主人(森下能幸)も、そのデマにより殺された犠牲者だった。その他のちさとのターゲットの中にも、そんな人間が山といたのだろう。 その事実を知らされたときの、ちさとの怒りが膨張する様が凄まじい。破裂してしまいそうな怒りが、おそらく早鐘のようになった心拍数が、観ているこちらにも伝わり、息ができなくなった。心臓を鷲掴みにされたような気分だった。このシーンの髙石の有り様を、「熱演」とか、「迫真の演技」とか、そんな陳腐な表現で片付けたくはない。あの怒りを、涙を、「演技」と言ってしまうこと自体が、髙石に、いや、杉本ちさとに失礼だ。 決して深夜ドラマを下に見るわけではないが、これだけの表現を深夜1時に放送してしまうことの、とてつもない贅沢さ。そして、さんざん「オフィス向日葵」のクズっぷりを見せ続けてからの、ちさとによる全員殲滅のカタルシス。今まで、ドラマを観てこれだけスカッとしたことはない。 11月20日、深夜1時。いよいよ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』は最終回を迎える。ついに協会に牙を剝いた、ちさととまひろの運命は。2人の幸せな結末を願ってやまない。正直観るのが怖いが、見届けねばならない。 そして2025年の後期には、ついにNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が始まる。髙石が演じるのは、あの「耳なし芳一の話」で有名な小泉八雲夫人・小泉セツである(役名は松野トキ)。大変興味深い題材であり、今から楽しみだ。だが我々が「髙石あかり」と聞いて、どうしても期待してしまうのがアクションである。もちろん髙石は、『ベビわる』以外の作品では普通の女の子も演じている。『ばけばけ』にアクション要素を期待するのが間違いだ。 とはいえ、小泉セツさんは武家の生まれである(出雲松江藩)。たしなみとして、武芸を叩き込まれていてもおかしくはない。夫婦喧嘩で薙刀を振るう髙石あかりを、見たくはないか!?
ハシマトシヒロ