ヘリノックス「コットワン コンバーチブル」が“最強コット”と称されるその理由
【理由②】独自構造と専用開発のシートが生み出す快適性能
快適に眠れるコットか否かはシートの張り具合も大きなポイント。張りが弱いと横になった際に沈み込んでしまい、肩周りが窮屈で圧迫感を感じたり、寝返りが打てずその都度目が覚めてしまったり。張り具合によっては、いっそのことコットを使わずにそのままマットを敷いて寝た方が眠れる...なんてこともあります。 この点についても、「コットワン コンバーチブル」はとにかく段違いで、軽く指で弾いた時に“ボンッ”とまるで太鼓を叩いたときのような音が鳴るほど。この寝心地の良さにも、さきほど紹介した独自のフレーム構造が関係しているのだとか。 「テコの原理によりシートにテンションをかける構造と、荷重を受け止めるフレーム形状、そしてポールを含むパーツ類の強度などが全て相まって、沈み込みやゆるみに強いんです」(長井さん) 実際に横になってみるとよく分かりますが、自宅用の高反発マットレスのように沈み込みを抑えてくれます。体重80kgの私ですら快適に眠れるほどの反発力で、寝返りを打っても気になりません。他に比べてきしみも少ない印象。 私のコットワンは購入して5~6年ほど経過していますが、シートのヘタリ、たるみを特に感じることもなく、寝心地の良さは変わらず。…気づいていない可能性もありますが。
【理由③】トップクラスの軽量・コンパクトさ
「コットワン コンバーチブル」以前のコットは、大型の組み立て式が6kg前後、小型のものでも4~5kgと、そこそこな重量がありました。ひとり分であれば気にならないけど、人数分揃えるとなると大変です。それに比べて、コットワンは本体重量が2.19kg、スタッフバック込みでも2.32kgと驚異的な軽さ。収納サイズも幅54×奥行き16×高さ16cmとかなり小さい。 さすがに徒歩や公共交通機関を利用してのキャンプで持ち運ぶには大きいですが、大型コットと同程度かそれよりも少し良い寝心地を、この収納サイズで実現できているのは驚きです。 さて、ここまで褒めちぎるような内容でしたが、一番の難点はその価格。「良い商品なのはわかっちゃいるけど、なかなか手を出せない金額なんだよなぁ…」という方も多いのでは? その点についても、“一度買ったら買い替えも必要なく長く使い続けられるギア”と考えたらどうでしょうか。ポールやシートの耐久性もさることながら、アフターサービスが充実しているので、長い目で見れば経済的。 「モンベルでは、過去モデルを含めて交換用パーツを準備しています。製品を長く愛用頂くための様々な修理サービスをご用意していますので、ぜひ一度モンベルの直営店までご相談頂ければ」(長井さん) 確かに高価なギアではありますが、長期間愛用できることを考えれば、良コスパなコットといえるのではないでしょうか。清水の舞台から飛び降りるくらいの心境にはなりますが…。 * * * 余談ではありますが、コットワンの日本上陸以前のコット界隈は、そもそもコットを使うキャンパーがそれほど多くなく、商品の選択肢も少なかった、と記憶しています。 当時のコットといえば大型のイメージで、代表的なものでいえばGIコット系でしょうか。ワイドなシートサイズに、しっかりとしたフレームで、寝心地・安心感はともに十分。しかしその分、収納サイズも大きく重量もあるため、ある程度積載量のあるクルマでないと持ち運ぶのも大変でした。また、このタイプのコットは張りを出すためか、フレームの組み立てにかなり力が要る印象があります。個人的には大好きでしたが、自宅用ベッドとして使用していましたね。 小型の組み立て式コットもありました。3000円程度と非常に安価だったので、一時期愛用していましたが、剛性を確保するためかサイズに反してそれなりに重量があり、足部分の取り付けが大変なものが多かった印象。 それが今や、軽量で収納サイズもコンパクト、張りも強くて組み立てやすい、そんなコットが当たり前に。私もキャンプを始めてせいぜい10年の若輩者ですが、それでもこの10年、リアルタイムでアイテムの進化を目の当たりにしてきました。 少なくともコット界隈の大きな変化は、「コットワン コンバーチブル」の影響が非常に大きかったなぁと感じますし、そもそもコットを使うキャンプが当たり前になったというのも、時代が変わったんだなぁとなんだか感慨深い気持ちになります。
<取材・文/山口健壱>