小久保監督が予告していた山田哲人の2本塁打の覚醒!
山田哲人で始まって山田哲人で終わる。そんなゲームだった。「1番・DH」に戻った山田が、いきなり先頭打者アーチ。リードされては執念で追いつく展開を3度繰り返したが、8回に引導を渡したのも山田のバットだった。内川の犠飛で1点を勝ち越すと2本目となるトドメの2ランをレフトスタンドに叩きこんだ。 初球。やや外角、高めの甘いスライダーだった。狙ったボールだったという。 「スライダーだけに絞ってフルスイングしました。前の打席、チャンスでスライダーに三振でした。しかも、三振ゲッツーという、もっともやってはならない終わり方でした。だから、気持ちを切り替え、そのスライダーを狙ったんです」 6回、小林のタイムリーヒットで5-5の同点に追いつき、なお一死一、二塁。一気に逆転を狙える場面で山田は、フルカウントから縦のスライダーを振って三振に倒れ、スタートを切っていた秋山が、三塁で刺されるという最悪の三振ゲッツーに終わっていた。 だが、そのショックを引きずることはなかった。 山田が、ミックスゾーンで何かにスイッチが入ったかのように語った。 「野球をやっていて、この3年間で一番学んだことが、切り替えの大事さです。調子の波を作らないためには気持ちの波を作らないことなんです」 ここまで打率は1割台。1次ラウンドの開幕のキューバ戦では、観客席にいた少年がグラブで捕球してしまい、二塁打に変わるという“幻のアーチ騒動”があり、SNSで“イジメ”にもあっていた少年に心温かいメッセージを送った。スタートはよく見えたが、「納得のいくバッティングはできていなかった」と、調子の波が下降線にあることを感じ取っていた。だが、そこを克服する確かな方法論が山田にはあった。トリプルスリー達成の中で得た極意、気持ちの切り替えである。 「難しいことは考えずに簡単なこと。前に突っ込まないとか、バランスを大事にするだとか、基本的なことを意識して切り替えてやっていました」 実は、この日のバッティング練習から、当たりが戻っていた。 山田自身も「今日は打てるかな、と思っていました。気持ちの部分で少し余裕が出ていました」と言うが、小久保監督は、トリプルスリーの爆発をコーチ陣に予告していたという。 「今日は練習から良かったので、本人には話をしていませんが、コーチ陣に『打つぞ』という話をしていたら、本当に打ちました。哲人の1番というのは、長打もあるので相手ピッチャーからすると非常に嫌です」 2発を含む3安打3打点4得点。眠っていた山田の覚醒は、2次ラウンド進出に向けて、「絶対に負けられない」、今日15日のイスラエル戦に向けての大きな収穫となった。