グループホームで職員が虚偽報告 入居者の受診遅れて骨折判明
介護大手「ツクイ」(横浜市)が神奈川県平塚市で運営する認知症対応型グループホーム(GH)の女性職員が2023年5月、医師に虚偽の報告をして、膝の痛みを訴える女性入居者(当時92歳)の受診を妨げていたことが判明した。女性はその後、全治約3カ月の左脚骨折と診断された。市は不適切な行為があったとしてツクイを指導した。 市や女性の家族によると、女性は23年5月17日、足の痛みをGHの職員に訴えた。膝付近が腫れて熱を持っており、施設側は協力医療機関の内科医に受診させた。「膝関節症」と診断されて痛み止めが処方された。 しかし、1週間後に別の医師が往診の際に、女性の膝が黄色く変色していることを確認。整形外科の受診について、女性の家族の意向を確認するよう女性職員に促した。だが、女性職員は家族と連絡を取らずに「家族は受診を望んでいない」と医師に虚偽の報告をしたという。 不審に思った別の職員が女性の家族に連絡し、女性は外部の病院で大腿(だいたい)骨骨折と診断された。市は23年6月、高齢者虐待防止法に基づき施設を立ち入り調査。その後「不適切な対応があった」としてツクイ側に入居者の安心な暮らしを確保するよう指導した。女性は7月に老衰で死亡した。 女性の家族によると、ツクイ側は家族に「延命治療を望まないとする家族の介護方針を拡大解釈した。思い違いから受診が遅れた」と説明したという。 ツクイの担当者は毎日新聞の取材に対し「家族に受診の要否を確認しなかったことは事実だが、受診を妨げる意図はなかった」と説明。「直前に事業所の体制と担当者が変わり、家族との連絡体制に不備や不足が生じた。保険者(市)に報告して指導を受け、再発防止に努めている」と回答した。【柿崎誠】