映画『ミッシング』主演 石原さとみ「過去にすがって生きるのは、すごく悲しい。 だから、私は常に挑戦していたい」
出産を経て仕事に復帰した石原さとみさんの第一作となった映画『ミッシング』。劇中で演じたのは幼い娘が失踪した母親役だったことに、驚いた人は少なくなかったはずだ。 石原さとみさんインタビューフォトギャラリー 演じる役も、出演する作品も、ひとつのイメージにとどまることなく、進化し続ける姿が魅力的。その理由に迫ります。
「今までの自分を変えてほしい」その一心で吉田監督に会った
映画『ミッシング』で、一人娘の失踪をきっかけに出口のない暗闇をさまよい続ける母親役に挑んだ石原さん。もがき苦しみながらも光を手にしようと懸命に生きる姿を真正面から描いたこの作品は、「どんな役でもいいから吉田監督の作品に出たいです」という石原さんのひと言から始まった。 「吉田監督が手がけられた『さんかく』や『ヒメアノ~ル』を見たとき、すごく好きだなって思ったんです。特に『ヒメアノ~ル』の森田(剛)さんのそれまでのイメージを覆すお芝居に憧れを抱いて、すごくうらやましくなった。それと同時に、私はこの世界には絶対に存在しない、吉田監督は絶対に私とは仕事をしないだろうなとも思いました。だからこそ、この人だったら私のことを変えてくれるかもしれない。直感的にそうビビッときて、手探りでいろんな伝手をたどって、バーで吉田監督に初めて会ったのが7年前。でも、最初は断られたんです。“石原さんはメジャーすぎて脚本のイメージがわかないなぁ”って。それでもなんとか連絡先だけは交換させてもらって(笑)、その日はただ雑談をして別れました。そしたら、3年後に突然“脚本を書きました”っていうメッセージが届いたんです。それまでトークルームは1ミリも動かなかったのに(笑)。メッセージを見た瞬間、飛び跳ねるようにしてよろこんだことは今でも覚えていますね」 石原さんを突き動かしたのは、“自分を変えたい”という強い想い。 「当時の私は、自分のアウトプットするものや求められているものに自分で飽きていたんです。ということは、当然世間も私に飽きているんだろうなっていう危機感や焦りがずっとあって。話はちょっとズレるんですけど、ドラマ「アンナチュラル」の撮影が終わって打ち上げのときに脚本家の野木亜紀子さんが“私は1年かけて、この脚本を書いた。それは、ただひとえに石原さとみを勝たせたいためだった”って言ってくださったことが本当に嬉しかったんです。だけど、そんな思いをして脚本を書いてくださる方には今後なかなか出会えない気がしたのも事実。だから、余計に同じものを追い求めることが怖くなって、自分を変えるためには、今までとは真逆のほうに動かなくちゃいけない。そう考えて、吉田監督に会いに行きました」 そして届いた、吉田監督からの脚本。 「子どもがいなくなる痛さみたいなものは、想像力を働かせないとわからなかったし、絶対に演じたい役だけど、どうやったらいいんだろうっていう戸惑いがすごくありました。そこから、最終的な脚本が完成したときは出産後だったんです。そこで久しぶりに目を通したときは、ページをめくれないくらい怖くて、心が壊れそうで……出産前に読んだときの印象とは大きく違っていることに気づきました。子どもを失う苦しさは、嫌でも容易に想像できてしまいましたからね。相当な覚悟を持って、クランクインにのぞむことを決めました」 映画の撮影が始まると、娘を失った母親を演じながら自身を追い込み、家に帰れば愛する子どもと過ごす日々。 「撮影期間中は役のまま家に帰ってしまっていて、今生の別れをしたあとの再会のように、毎回我が子を強く抱きしめて“会いたかったよ~‼”って言っていました。ただ、そこで満たされてしまうと、今度は役に戻ることが難しかったので、無理に切り替えようとはしませんでした」