切り立つ巨大な岩山の頂にある宮殿遺跡 二人の王子の後継者争いの果てに
港町の首都コロンボから内陸に向かいおよそ180キロ、車窓の向こうに、切り立つ巨大な岩山が現れた。スリランカで最も有名な観光スポットの一つ、シギリア・ロックだ。200メートル近い高さでそびえ立つその岩頂には、昔あった宮殿の遺跡が今も残る。 5世紀のシンハラ王朝時代、当時の王だったダトゥセナには二人の妃がいて、それぞれモガラーナとカシュヤパという息子がいた。血筋の関係で王位を継ぐと思われていたモガラーナに嫉妬したカシュヤパは、将軍と組んで王を殺し、自ら王の座についた。父を殺され、身の危険を感じたモガラーナはインドに一旦身を隠す。
モガラーナの復讐(ふくしゅう)を恐れたカシュヤパは、首都であったアヌラダプラから都を移し、切り立ったシギリア・ロックの上に宮殿を建てた。それから数年後、仇討ちのためスリランカに戻ったモガラーナは、軍を率いてシギリアに攻め込んだ。劣勢に立たされたカシュヤパはジリジリと追い詰められたが、プライドが高く、敵によって殺されることを潔しとしなかった彼は、自ら命を絶ったという。 彼の死後、シギリア・ロックの宮殿は僧院に寄贈され、キャンディ王国時代にも使われたと記録が残るが、その後、手をかけられることなく朽ち果てた。 (2016年1月撮影) ※この記事はTHE PAGEの写真家・高橋邦典氏による連載「フォトジャーナル<スリランカの旅>」の一部を抜粋したものです。