<高校野球>清宮、甲子園初アーチを含む5打点で早実8強
第97回全国高校野球選手権の3回戦が15日、甲子園で行われ、早実(西東京)が、スーパー1年生、清宮幸太郎の甲子園初ホームランとなる2ランなどで8-4で東海大甲府(山梨)に打ち勝ってベスト8進出を決めた。清宮は、本塁打と2本の二塁打を放ち4打数3安打5打点と大暴れ。ついに怪物が甲子園で覚醒した。
その快音に満員の甲子園がざわついた。 1-1で迎えた3回無死一塁。東海大甲府の巨漢の2年生エース、菊池に1ボール-2ストライクと追いこまれたが、ど真ん中にきたチェンジアップを見逃さない。ぶれないスイング。打球は、ライトへ高く舞い上がった。左打者によって逆風となる甲子園特有の浜風はやんでいた。ライトは、背中を向けたまま打球を見送った。勝ち越しの2ラン。ノシノシとダイヤモンドを回った清宮は、三塁ベースの手前で、ポンポンと二回手を打った。ベンチに帰って手荒い祝福を受けると満面の笑みだ。 「ストレートに振り遅れない。空振りを恐れずふっていきたい」 試合前に清宮は、そう語っていた。 一方の東海大甲府バッテリーは「徹底してインサイドを攻めたい」と清宮の弱点を狙っていた。だが、一回一死二塁の第一打席では、インサイドを意識しすぎてデッドボールを与えていた。そのミスが菊池の心理になんらかの影響を与えていたのか。 制球ミスではあったが、カウントを追い込まれていて変化球につられることなく、対応した打棒は、怪物と呼ぶしかない。ホームランがないことに対して「芯に当たっていませんが、力みはないんですよ」と、まったく気にするそぶりのなかった清宮にしてみれば、ヒットの延長のようなホームランだったのかもしれない。 1年生のホームランとなると、5年前に九州学院の萩原英之が、3回戦で放って以来。大阪桐蔭時代の中田翔は、2005年に1年夏の初戦でホームランを記録しているが、星稜時代の松井秀喜は、ホームランを打てなかったし、PL時代の清原和博でさえ、初ホームランは、6試合目となる決勝戦だった。怪物・清宮は、数字の上でも松井、清原を越えたことになる。 清宮の一発で甲子園の雰囲気が変わると、続くキャプテンの加藤もライトへのホームランで続いた。 清宮劇場は、まだ終わらない。5回に東海大甲府に2点を返され、2点差に詰め寄られたが、6回に3つの内野安打で二死満塁として、清宮に打席が回ってきた。マウンドには、2番手の松葉。2-1のバッティングカウントから、これもチェンジアップだった。小さい変化で、沈めてきたボールは、そう甘いコースではなかったが、コンパクトに振りぬくと、金属音を残した低い弾道の打球は、ワンバウンドでライトフェンスにはねかえった。走者一掃。8-3と試合を決定づけるタイムリーツーベースとなった。なんと5打点。1試合最多打点の大会記録は、春夏を通じで、現在、横浜DeNAの筒香嘉智(横浜高)ら3人が持っている8打点で、そこには、及ばなかったが、ついに怪物は甲子園で覚醒した。 8回も一死走者なしの打席で、初球の高めに浮いた甘いストレートを見逃さず、またライト線を破るツーベース。早実は、1年生の怪物のバットに牽引され、8-4のスコアで、強豪、東海大甲府を倒して、斎藤佑樹を擁した優勝以来、9年ぶりのベスト8へとコマを進めた。