石川遼「いま自分を信じられる」 スイング改造5年目の今 清水満のSPORTSマインド
久々にすがすがしい姿があった。男子ゴルフの石川遼である。BMWツアー選手権森ビル杯(茨城)最終日の9日、1イーグル、8バーディー、2ボギーの63のビッグスコア。通算13アンダーで臨んだ岩田寛とのプレーオフには敗れたが、そこに悔しさはなかった。 【写真】18番の2打目でバンカーからスーパーショット 「ガンガンいって、このスコアを取ったというのではなく、しっかりとした自分のゲームプランを立ててプレーしてのスコアだったので非常に収穫があった」 もう4年になる。2020年3月、スイング改造に着手。総合データ分析にたけた田中剛コーチに師事した。自身のゴルフ人生で初の外部コーチだった。ポイントはテイクバックのトップの位置。「以前はクラブが地面に垂れるくらい大きかったトップを浅くし、かつ飛距離を上げる」。だから持ち球も(打球が落下する際に右に曲がる)フェードから正反対のドローへ。より高みを目指し、〝再現性の高いスイング〟を求めた。 ところが、改造前の19年にツアー3勝した豪快なスイングが消えた。ショットがバラつき、悩み苦しむ石川がいた。「戻した方がいいのに…」という周囲の声も聞こえたが、自ら決断した道を進み続けることをやめなかった。スイングとの戦いだけでなく、トレーニングも並行して続けた。スイングに必要な背筋、下半身の筋力は4年前に比べ〝別人の大きさ〟になった。 昨年初秋、フジサンケイクラシック(山梨)のとき父・勝美さんは「遼のスイングのチェックポイントは180個くらいあったらしい。逆戻りもする。気が遠くなる作業をやってる」と。昨年12月、それを石川にぶつけた。「以前はミスしたら『アレ?』と思ったが、今は原因がわかるから次に引きずらない。時間はかかったけど、いい方向に進んでいる」と笑った。 ツアー18勝、ほぼ共通するのはコースが広かった。前週のBMW…の宍戸ヒルズCCはフェアウエーが極端に狭い。過去10回出場で予選落ち5度、苦手だったが、新スイングがさえた。象徴は最終日最終18番(パー4)、1打目は330ヤードの飛距離が出た。ピンまで159ヤードの2打目を〝美しいドロー〟でピン10センチに付けた。今週は全米オープン(13日開幕、米ノースカロライナ州)に出場する。 「いま自分のスイングを信じられる。これまでやってきたことが正しいと証明できたと思う。(全米オープンでは)自分の成長を測れるようなゴルフをやりたい」。石川スイング改造5年目の今である。(特別記者)