体内に侵入した“マイクロプラスチック”が「心臓発作」「脳卒中」リスクを高める可能性
イタリアのカンパニア大学ルイジヴァンヴィテッリらの研究グループは、体内に侵入する化学物質を含んだ小さなプラスチック片が心臓の健康にどう影響するのかを調べた結果、心臓発作と脳卒中のリスクを高める可能性があることを明らかにしました。この内容について中路医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
発表された研究内容とは?
編集部: カンパニア大学ルイジヴァンヴィテッリらの研究グループが発表した研究内容について教えてください。 中路先生: カンパニア大学ルイジヴァンヴィテッリらの研究グループは、体内に侵入する化学物質を含んだ小さなプラスチック片が心臓の健康にどう影響するのかを調べました。成果は学術誌「The New England Journal of Medicine」に掲載されています。 研究グループは、無症候性の頸動脈疾患に対して頸動脈内膜剥離術を受けた患者を対象に、多施設共同前向き観察研究をおこないました。257人の患者に対して術後3年近く追跡がおこなわれ、58.4%にあたる150人の患者の頸動脈プラークからポリエチレンが検出されています。また、12.1%にあたる31人の患者にも、測定可能な量のポリ塩化ビニルが検出されました。 電子顕微鏡検査では、プラークのマクロファージ中に、目に見えるギザギザのエッジをもった異物が存在していることが確認されています。X線検査では、これらの粒子の一部に塩素が含まれていることが示されました。頸動脈プラークにマイクロプラスチックが確認された人は、そうでなかった人と比べて、致死的ではない心臓発作や脳卒中の発症、何らかの原因での死亡が約4倍多いことがわかりました。 研究グループは今回の結果について、「因果関係を証明するものではなく、喫煙や運動不足などの要因が健康状態を左右する可能性がある」と論文に明記しています。その一方で、「今回の研究結果は、プラスチックが健康に及ぼす危険性に関する一連の研究に加わる重要な発見であり、より大規模かつ広範囲に調査されるべきだ」とも指摘しています。