最高血圧が「年齢+90」以下なら正常とされていた60年代…実は科学的根拠の信頼度が低い現代の基準値「140/90」にこだわる危険性
最高血圧と最低血圧の差って気にしたほうがいい?
また、最高血圧と最低血圧の差の大小を気にされる方もけっこういらっしゃいます。たとえば120/90などと差が狭めだったり、反対に150/80と極端に差が広かったりすると、「何か不調が起こっているのでは?」と不安になりますよね。 もちろん最高血圧と最低血圧の差も、人によって違います。若いときは心臓のポンプ力が強いので差が狭い傾向がありますし、反対に60歳を過ぎるくらいから最高血圧が上がってくるため、差が広がってくる傾向があります。 ですからあまり神経質になる必要はないのですが、一応の目安としてお伝えしますと、血圧の差がだいたい40~60の範囲に収まっているなら、とくに心配する必要はありません。差が狭い場合も、最高血圧が正常範囲内なら、あまり気にしなくていいでしょう。 ですが、あまりに差が狭い、または広い状態が続く場合は、一度病院に行ってきちんと測ってもらってください。とくに差が80以上ある場合は、心臓がうまく作動していない可能性がありますので、心臓の検査を受けられたほうがよいかもしれません。ただ、こちらも多くは血圧計の使い方が間違っている場合が多い。やはり、病院に行く前に一度説明書をきちんと読んで、測り直してほしいと思います。
体格が違えば、適正血圧の値が違うのが当然!
むやみに高血圧を恐れる必要がない理由は、他にもいろいろあります。その一つに、〝血圧の個性〟があります。人間には、大きい人小さい人、太い人や細い人がいて、みなそれぞれ違いますから、当然、適正な血圧も人によって違います。 上が140ぐらいでちょうどいいという人もいれば、反対にいつも上が90ぐらいしかないという人もいる。つまり、血圧にも個性があるのです。それを「はい、140以上は高血圧ですよ」とバチッと切ってしまうのはどうなのでしょう? 以前に、私の著書『薬に頼らず血圧を下げる方法』を読んだ方が、感想としてこんなことを書いていました。「薬を飲むといったん血圧は下がるのだけど、またすぐに上がってくる。もしかしたら薬を飲む前の血圧が自分にとっての正常値で、体が元に戻そうとしているんじゃないかな」と。これを読んだとき私は思わず「その通り!!」と口にしていました。そう、薬が効かないのではなくて、むしろ元に戻す機能が働いている健康体なのです。 シドニーオリンピック・女子マラソンの金メダリストとして有名な高橋尚子さんは、心拍数が30回台だったと聞きます。普通の人が、だいたい60~75回ですから、心臓のポンプ力が相当強いということ。当然、血圧もかなり低いことでしょう。それが高橋さんの血圧の個性。もともと心臓が強く、血管も柔らかく血液が流れやすいからこそ、42・195キロもの長距離をあれだけの速さで走れたのだと思います。 ですから私たちも、降圧体操を行ってNO(エヌオー:血管内で発生し、血管を柔らかくする物質)の分泌を増やせば、しなやかな血管を手に入れることができるのです! 写真/shutterstock ---------- 加藤雅俊(かとう まさとし) 薬剤師/薬学研究者/ミッツ・エンタープライズ(株)代表取締役社長/JHT日本ホリスティックセラピー協会会長/JHT日本ホリスティックセラピストアカデミー校長 薬に頼らずに、食事や運動、東洋医学など、多方面から症状にアプローチする、「ホリスティック」という考え方を日本で初めて提唱。現在もその第一人者である。大学卒業後、ロシュ・ダイアグノスティックス(株)研究所にて血液関連の研究開発に携わった後、起業。著書に『こう食べれば身体が変わるアミノ酸食事術』『1日3分!血圧と血糖値を下げたいなら血管を鍛えなさい』(ともに講談社)など多数。著書累計は250万部を超える。 ----------