『俺だけレベルアップな件』『転スラ』『最強タンク』 最強チートスキルの持ち主を考える
世はまさにチートスキルの戦国時代。様々なアニメが放送されては、主人公たちがそれぞれのスキルを駆使して敵を倒し、ライバルを退け圧倒的な存在感を示している。もっともスキルの内容は千差万別。単純にパワーで押すものもあれば、他に差を付け自分だけが抜きん出る能力もあり、知力もあってそれぞれの世界で最強を競っている。どのスキルが最もチートなのか。誰が1番強いのか。 【写真】『最強タンク』主人公が盾を構えている姿 1月に始まったTVアニメにも、チートスキルの持ち主たちがゴロゴロと登場してくる。DUBU(REDICE STUDIO)、Chugong、h-goonが原作の『俺だけレベルアップな件』の主人公・水篠旬は、E級ハンターで人類最弱と言われていたが、ある事件をきかっけに「システム」の力を手に入れ、自分だけがステータスウィンドウを見られるようになる。どうすればミッションをクリアできるかが分かるのだからこれは強い。ひとりだけグングンと成長して抜きん出た存在になっていく。 同じく1月から放送中の『最強タンクの迷宮攻略~体力9999のレアスキル持ちタンク、勇者パーティーを追放される~』の主人公・ルードも結構なチートスキルの持ち主だ。原作・木嶋隆太、漫画・如月命による作品のTVアニメ。勇者のパーティーに所属してタンク役を務めていたが、不要だと思われ追放されてしまう。ところがルードには味方への攻撃を肩代わりしたり、攻撃力を高めたりするスキルがあって、それで活躍できていた勇者パーティーは凋落。ルードは新たな仲間を得て病弱な妹のマニシアを救う方法を探す冒険に出る。仲間にすればこれほど頼もしいスキルはない。 もっとも、ルード個人が“最強”かというと難しいところ。珪素のライトノベルを原作に放送中のTVアニメ『異修羅』に登場するキャラクターは、全員が最強で全員が勇者。その誰1人にもルードがかなうとは思えない。魔王が倒された世界で真の最強を決めるため、トーナメントで戦うことになった奴らは巨大構造物すら一刀で切り裂く「柳の剣のソウジロウ」がいれば、ワイバーンでありながら武器を扱う「星馳せアルス」がいて、言葉によって天候も地形も支配する「世界詞のキア」もいて、音速を超えて動きながら槍撃を放つ「音斬りシャルク」もいる。一人ひとりが主人公級の強さの持ち主がバトルを繰り広げる、かつてないスリリングさを持った物語だ。 「世界詞のキア」と同じ“言霊使い”という点では、藤孝剛志のライトノベルや納都花丸のコミカライズを原作のTVアニメ『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』の主人公・高遠夜霧も同じで、もしかしたらキアより強いかもしれない。何しろ「死ね」と口にしたら、即座に相手が死んでしまうのだから誰もかなうはずがない。火を操ろうとも空を飛ぼうともかなわない。とはいえ、言葉を発する間もなく倒されたら意味が無い。味方も殺しかねない両刃の剣でもあるチート能力を、どう駆使するかが見どころのアニメと言えそうだ。 『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中の甲本一の漫画が原作の『マッシュル-MASHLE-』も、1月から第2期が始まった。主人公のマッシュ・バーンデッドは魔法がすべての世界で魔法を持たない身でありながら、徹底的に筋肉を鍛え上げることによって魔法使いも凌駕する強さを見せる。筋肉の力で高速移動し筋肉の力で相手を打てば周りからは魔法のようだと思われる。 そんなマッシュのチートマッスルと勝負できるのは、2023年12月18日から配信が始まった『魁!!令和の男塾』の江田島平八くらいだろうか。宮下あきらの『魁!!男塾』を『秘密結社鷹の爪』のFROGMANがいつものタッチでアニメ化。最強の男たちの上に君臨する最強の爺さんにかなう奴などいるのか? いやいる。ということで、鍛え上げられた肉体だけを武器に戦う男として、ONEの原作を村田雄介が漫画にした『ワンパンマン』のサイタマがマッシュや江田島平八の前に立ち塞がりそう。というより攻撃されても気付かない可能性すら高い。とにかく頑丈。そしてひとたび拳を放てば凶暴なモンスターもチリになって霧散する。成層圏の外にすら飛び出して戻ってこられるところは『ジョジョの奇妙な冒険』のカーズ以上。そんなサイタマが、怪人化によってパワーを得たガロウを相手に戦うところを、第3期の制作が決まっているアニメで早く観てみたい。 アニメ化が決まっているところでは、伏瀬のライトノベルを原作にした『転生したらスライムだった件』のTVアニメ第3期が4月から放送予定。最弱のスライムに転生しながら知性を司る「大賢者」と相手の能力を取り込む「捕食者」のスキルを使ってのし上がり、王国を作り魔王にまで上り詰めたリムル・テンペストの強さもなかなかなものだ。異世界の強者を従え悪魔すら味方につける活躍ぶりだが、そんなリムルでも度々窮地に陥る。それでも復活して仲間の助けを得ながら勝ち上がっていくところに、チームとしての強さを見る。 4月からTVアニメが放送開始となる作品では、松本直也の漫画が原作の『怪獣8号』に登場する怪獣8号の強さも大概だ。怪獣と戦う部隊に入ろうとしたが試験で落とされ32才になってしまった日比野カフカが、小型の怪獣に口の中に侵入されたことをきっかけに強大な怪獣の力を持つようになってしまった。防衛隊が手こずる凶暴な怪獣でも軽々と倒すパワーと、怪獣の死骸を掃除する仕事を通して得た怪獣の知識という2つのチートを武器にした戦いぶりを、Production I.Gの制作するハイクオリティのアニメによって、スタジオカラーがデザインする怪獣の迫力とともに楽しめる。放送開始が待ち遠しい。 Production I.Gといえば、ゆでたまご原作の漫画を原作にしたアニメ『キン肉マン』完璧超人始祖編を制作中で、2024年に放送される予定。神谷明が演じた主人公を宮野真守が引き継ぐことも話題になっているが、注目はやはりキン肉マンの強さ。蹴られ殴られて倒れても、彼には最強スキル“火事場のクソ力”がある。これが発揮されているうちは、相手が神でも悪魔でも、奇跡の逆転を見せてくれるだろう。 これら数多のチートスキルの持ち主たちが並んでも、物量で来られたら押し切られるかもしれない。田中芳樹のスペースオペラを原作に、1月から放送が始まったTVアニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These』で、やがて銀河帝国を率いることになるラインハルト・フォン・ローエングラムの号令が下れば、幾万もの艦隊が動くことになるのだ。個人のチートが届く範囲ではないだろう。そんなラインハルトを知力で出し抜くのが自由惑星同盟の提督ヤン・ウェンリー。そして生活力が皆無のヤンを叱咤するのが従卒のユリアン・ミンツであり、後に妻となるフレデリカ・グリーンヒルということは、この二人が最強チートの持ち主ということか? さすがにそれはないだろう。結局、比べるのは不可能だということにしておこう。
タニグチリウイチ