【かすみ草部会大賞】担い手確保の手本に(2月8日)
「昭和かすみ草」の栽培を手がけるJA会津よつばかすみ草部会(昭和村)が第53回日本農業賞の集団組織の部で最高賞の大賞に輝いた。新規就農者が順調に増えている点などから、高い将来性があると評価された。県内では農業従事者の高齢化が進む。部会が築き上げてきた担い手育成の取り組みを、新規就農者受け入れの手本にしてほしい。 部会は、昭和かすみ草を生産する昭和、柳津、三島、金山の4町村の91戸でつくる。2023(令和5)年度の生産本数は532万本、販売額は6億4795万円で、ともに過去最高を更新した。部会の平均年齢は2023年9月現在、58・9歳で、IターンやUターンの新規就農者が全就農者の3分の1を占める。 2020年の農林業センサスによると、主に自営農業に携わる県内の基幹的農業従者の平均年齢は69・2歳で、65歳以上が全体の74・8%を占める現状を踏まえれば比較的若く、新規就農者が平均年齢を押し下げていると言える。さらに若い世代に参入を促すには、学生のインターンシップ受け入れなどを通して魅力を伝えていく必要がある。
特筆すべきは、新規就農者の定着率が高い点だ。これまでに30組42人を受け入れ、25組36人が現在も昭和村で就農を続けている。直近5年だけをみれば、定着率は100%を誇る。就農希望者は地元生産者から1年がかりで栽培や出荷のノウハウを学ぶ。行政の移住補助やJAの耕地引き継ぎなどの支援もさることながら、部会の中核を担っているメンバーがかつては新規就農者だったことから、自身の体験を踏まえた親身な指導が支えになっている。 昨年4月に福島市に開所した県農業経営・就農支援センターには9カ月間で新規就農などに関する相談が1082件寄せられている。今後いかに就農に結び付けられるかが課題だ。受け入れと育成の好循環を生んでいる部会の取り組みは大いに参考になる。 JAグループ福島は園芸作物の栽培強化に向けた「ふくしま園芸ギガ団地構想」を掲げている。担い手の確保は産地の維持・拡大に不可欠だが、近年は人口減少を緩和する手だての一つとしても重みを増している。今回の大賞受賞を追い風に、早期実現を期待したい。(紺野正人)