「私の脳は溶けていました」と写真家、インコとオウムの”聖域“を砂漠につくったわけとは
「考えることも、何かをすることもできません」、「2024 写真が記録した1年」撮影秘話
米国アリゾナ州南部の砂漠の中にある鳥類福祉団体「オアシス・サンクチュアリ」は、800羽ほどのインコとオウムの終のすみかだ。いずれも、かつてペットとして飼われていたり、違法に取引されたりしたものたちだ。 ギャラリー:行き場を失う長寿なペットのインコやオウムやカメたち 写真15点 写真家のクリスティ・ヘム・クロック氏を出迎えてくれたのは、25歳になるコンゴウインコのトゥイッチだった。11歳になるまでに、9人の飼い主のもとを転々としたという。 真っ赤なインコのローズバッドは、きれいな赤色が特徴で、撮影のときにヘム・クロック氏のブーツにとまっていた。 オアシスの責任者、ジャネット・トランブル氏は、棒を使ってヘム・クロック氏のカメラを守らなければならなかった。「インコとオウムは好奇心旺盛で、関心のあるものは何でも調べようとします」とトランブル氏は言う。 ジャングルでコミュニケーションを取るため、自然と声は大きくなった。また、インコとオウムは社会性が強く、長生きだ。人間と同じくらいの寿命を持つ鳥もいる。 飼育下ではストレスを感じやすく、攻撃的になったり、羽が抜けたりすることがある。献身的な飼い主でさえ、何十年も世話を続けるのは難しいこともある。 この場所では、鳥たちが自由に声を上げられる。ただしそれは、ヘム・クロック氏にとっては難題だった。これほどたくさんのインコとオウムが最終的にこの場所に来ることになる理由もそこにある。 「鳥小屋の騒々しさは、私にとって大変なストレスでした。とてもうるさく、まるで警報器が鳴りつづけている家の中を歩くようでした」 「考えることも、何かをすることもできません。私の脳は溶けていました」
文=Heidi Schultz/訳=鈴木和博