少女まんが雑誌『花とゆめ』がつなぎ続けた「自由」 創刊50周年、唯一無二の個性 美へのまなざし
数々の名作を生み出してきた少女まんが雑誌『花とゆめ』のこれまでの歩みを振り返る展覧会「創刊50周年記念 花とゆめ展」が、24日から6月30日まで、東京・六本木ヒルズの東京シティビューで開催される。少女まんがに〝自由〟をもたらした同誌。その唯一無二の個性を、歴代の作家から現在連載中まで74人の作家による約200点の原画で概観する。 「花ゆめ」の愛称で親しまれる同誌は昭和49年、白泉社から創刊。ちょうど池田理代子の「ベルサイユのばら」が大ヒットするなど、少女まんがブームが起きていた時代に、講談社の『なかよし』や集英社の『りぼん』などに続く後発として誕生した。 「『花ゆめ』は乙女チックな路線とは一線を画す雑誌として個性を確立していった」と話すのは、女子まんが研究家の小田真琴氏。創刊号から、当時はタブーだった性的な要素に一歩踏み込んだ山岸凉子によるバレエまんが「アラベスク(第2部)」を連載した。さらに2年後には、美内すずえの「ガラスの仮面」の連載が始まる。天才的な演劇の才能を持つ少女・北島マヤを主人公にした、現在も連載が続くドラマチックな物語だ。「演劇とスポ根ものを組み合わせた圧倒的な熱量。男性ファンも取り込み、読者層を広げた」 その後も同誌の独自路線は続く。62年に連載開始の佐々木倫子「動物のお医者さん」は、獣医学部を舞台にした学生と動物のユーモラスなエピソードを描き、大ヒットとなった。「当時はラブコメ全盛期だったが、恋愛要素は一切出さないという新しさ。舞台も特殊でチャレンジングな作品だったが、佐々木の卓越したセンスで世代も性別も超えたヒット作となった」 月で暮らしていたという前世の記憶を持つ少年少女たちによるSFファンタジー、日渡早紀「ぼくの地球を守って」も同時期にブームを巻き起こした。「その物語のうねりの大きさ、スケール感は別格。後世にも影響を与えた作品」。少女まんがといえば恋愛。その枠を取り払い、少女まんがに〝自由〟をもたらしたのが同誌だったのだ。「作品が自由であり続けることで、読者の心も自由になれる」 原画のすごみにも注目してほしい、と小田氏。「例えば『ガラスの仮面』。原画の迫力が本当にすごい。キャラクターの目力に圧倒されるはず。美内すずえの現場には名だたる作家がアシスタントとして入っていたので、『この背景は誰が描いたのかな?』と想像をめぐらすのもまた楽しい」