アメリカで来春ラグビーのプロリーグ誕生 ビジネスとして勝算はあるのか?
米でプロラグビーは成功するのか?
ボストン・グローブ紙でサッカー担当記者として1990年イタリア大会から7大会連続でワールドカップを取材し、過去には野球やバスケットボールも担当、現在もESPNなどのスポーツメディアで活躍するジャーナリストのフランク・デラッパ氏は、アメリカ国内でマイナースポーツの位置にいたサッカーを取り巻く環境がこの10年で大きく変わったことで、サッカー以外のマイナースポーツ関係者もビジネスチャンスを模索していると語ります。世界第2位のサッカー競技人口を抱えるアメリカでは、プロの一部リーグに相当するMLS(メジャーリーグサッカー)の観客動員数が年々増加し、1試合当たりの平均観客数は2万人を突破。Jリーグの平均観客数をすでに超えています。 デラッパ氏は男子サッカーで通じた手法が他のスポーツにも当てはまると考えるのは危険だと警鐘を鳴らします。MLSは紆余曲折を経て多くのファンを開拓しましたが、男子サッカーよりも話題性のあった女子サッカーでは、2000年代に資金難でプロリーグが2回も廃止に追い込まれています。 「アメリカにおけるラグビーはニッチなスポーツの1つで、それ以上でもそれ以下でもありません。こういったスポーツではサラリーキャップ制を導入し、身の丈に合った形でリーグを運営することが大切なのですが、プロサッカーリーグがこの数年で商業的に大成功を収め、今年から年間約1億ドル規模のテレビ放映権料を手にしたため、プロラグビーもリーグの早急な拡大によって一気にメジャースポーツにしたいという投資家やマーケティング担当者の思惑が見え隠れします。今回のラグビーのようにMLSの成功に触発されたプロスポーツ団体はいくつもありますが、 競技人口やファンの多いサッカーですらここまでくるのに20年かかっているのです」
来年4月から開催されるラグビーのプロリーグ。会場は中規模サイズのスタジアムが考えられているようで、キャパシティは5000前後というスタジアムが少なくなさそうです。テレビ中継は行われず、インターネットのストリーミング映像がスタジアム観戦以外でゲームを楽しむ手段になります。まだ参加を発表していないチームがあったり、スタジアムの規模の小ささや、テレビなどの媒体を使って不特定多数の人にラグビーを知ってもらう計画も現時点では難しく、プロリーグを進めていく上で課題は山積しています。 しかし、昨年11月にシカゴのソルジャー・フィールドで行われたアメリカ代表対ニュージーランド代表の試合のチケットは完売し、6万1500人がオールブラックスの活躍に歓喜しました。スタープレーヤーが少しずつやって来るようになれば、アメリカラグビーが大きく覚醒するチャンスが到来するかもしれません。 (ジャーナリスト・仲野博文)