おぎぬまXのキン肉マンレビュー【コミックス第37巻編】~『ジャンプ』連載終了から22年後の衝撃~
●キン肉マンの闘いは終わらない......ゆえに さて、ここまで語ってきた『ウォーズマンビギンズ』以外に収録された3篇は、いずれも『週刊少年ジャンプ』時代の最終シリーズ「キン肉星王位争奪編」以降のキン肉マンの後日談を描いたものなのですが、今回のレビューではそこからもう1篇『キン肉マンVSテリーマンの巻』を取り上げさせていただこうと思います。 なぜ僕がこのエピソードを選んだかと言いますと、まずこれを読むとついつい『キン肉マンⅡ世』を読み直したくなるんですよ。というのもそもそもこの話は『キン肉マンⅡ世』連載中に、その枠組みの中で過去のキン肉マンの活躍を思い起こす......というコンセプトで描かれた物語でした。 ゆえにここにはミートが話すその逸話の聞き手として『キン肉マン』には出てこないはずの彼らの息子、キン肉万太郎、そしてテリー・ザ・キッドも出てきます。 そのため、自ずといつもの『キン肉マン』とは似て非なる『キン肉マンⅡ世』らしさもこの読切内には感じられます。たとえばここに出てくるミートのファッション、無印『キン肉マン』の中では絶対に着ないようなオシャレな服装をしていたり、万太郎とキッドがオフの日にギャルにナンパしてたり、今となっては懐かしい平成の風景が詰まってますね。II世を未読の方にとっては、スグルやテリーと瓜二つの新世代超人たちが気になって仕方ないんじゃないでしょうか。
そして本題、ミートの口から語られるのは、過去に一度だけクローズドで実現したという幻の闘い、キン肉マンとテリーマンによる宿命の対決エピソードです。 王位争奪戦を制したキン肉マンが母星に帰ろうとする冒頭のシーン。多くの懐かしい超人たちが見送りに来ている中、テリーマンだけは不満顔。そして彼は宇宙船に乗り込もうとするキン肉マンをそのギリギリ寸前で呼び止め、激しく問い詰めます。何かやり残したことがあるだろう、このテリーマンとの闘いの決着をお前はつけていないだろう、と。 そこからふたりは限られた時間内で最後の対決の約束をかわし、そこに向けての特訓を各々始めるのです。 その闘いの顛末については、ここで僕が語り尽くすより実際に読んでいただくのがいいかと思い、割愛させていただきますが、読まれるにあたって、ぜひ意識していただきたい特筆すべき点があります。先ほどの『ウォーズマンビギンズ』とも共通しますが、物語の流れがいつものキン肉マン視点ではなく、主に挑戦者であるテリーマン側の視点で、〝対戦相手〟としてのキン肉マンが描かれているところです。 それだけに、キン肉マンもいつものようなふざけた素振りは控えめです。むしろ、念入りかつストイックなトレーニングをこなしながら、終始険しい表情。宇宙最強の超人レスラーは伊達じゃありません。対戦対手から見たキン肉マンって、実はけっこう怖いんだ......と感じさせる作りになっていてなかなか新鮮です。 そして着々と対戦準備が進んでいくのですが、対戦の当事者であるふたり以外にも注目です!いつもは一枚岩であるメインの正義超人たちが、今回は各々果たしてどちらのサポートに回るのか。結果、ウォーズマンとバッファローマンがテリーマン側に付くというサプライズ。 さらにスパーリングではあるものの、そこで繰り広げられた夢の対決......テリーマン対バッファローマンの闘いは見逃がせません。特に、テリーマンがバッファローマンに対して放つ、正真正銘のカーフ・ブランディング(仔牛の焼き印押し)は、ここでしか見られない必見のワンシーンでしょう! 以下は総括となりますが、この他の読切2篇『キン肉マンの結婚式!!の巻』『マッスル・リターンズの巻』も含め、例の王位争奪戦の後日談を描くどのエピソードにも共通していることはただひとつ。キン肉マンの闘いは決して終わらない!......ということです。 そして実際、この37巻発売当時には誰もが想像すらしていなかった大事件が約2年後、起こります。それがこの続きとなる新章「完璧超人始祖編」の開始による初代『キン肉マン』まさかの連載復活です! 次回以降はこのレビューでもついに、第38巻以降の新章について熱く語っていくことになります。改めまして来月からも引き続きお付き合いのほど、何卒お願いいたします!