<ラグビー>国立を満員にした最後の早明戦の意義と課題
会場である東京・国立競技場には、公式発表で46961人の観客が集った。 関東大学対抗戦Aの最終節である早大対明大戦。東京五輪に向けての大改修に入るため、現在の国立競技場で、伝統のある早明戦が行われるのは、これが最後。両チームの選手、スタッフ、関係者が今春から「国立をホームにしよう。」プロジェクトという集客活動を行ってきた。 紫と白のジャージーの明大、ナンバーエイト圓生正義主将は心を躍らせた。この大一番には初出場だった。「いざ、グラウンドに立ってみると、応援の多さ、空気感に圧倒された」 ■超満員となった”国立”最後の早明戦 ここ数年来、早明戦の入場者数は3万人台。スタンドはオレンジの座席の色が目立っていた。えんじと黒のジャージー、早大のフランカー金正奎副将がこう感じるのも自然だった。「あれだけの超満員のなかでできるのは初めての経験だったので…地に足がつかなかったというのが本音です」 2013年12月1日、国立での最後の早明戦。普通のキックに距離が出るだけでトライが決まったような声が沸く、トランス状態のなかで80分は過ぎた。対抗戦ここまで3勝3敗と苦しむ明大が、序盤から攻防の最前線で圧力をかけた。ナンバーエイト圓生主将の述懐――。 ■ロースコアの好ゲーム 早大「普段どおりやろう」 「まずセットプレー(スクラムやラインアウトなどプレーの起点)をしっかりやっていきたいと思っていました。そこに関しては戦えていた。成果は出たと思います。ブレイクダウン(ボール争奪局面)では1人目がタックル、2人目がファイト…と、春からずっとやっていた。そこがたまたま、しっかりハマったのかなと」 緊張の色もあった早大はミスを連発する。しかし、後にトライを記録するフランカー金副将は「落ち着いて、普段通りやろう」と皆に声をかけていた。 3―3で迎えた後半開始早々、明大がキックオフでボールをお見合いすると、えんじと黒の集団がチャンスを作る。じっくりと攻めを重ね、最後は敵陣ゴール前の左タッチライン際に立つフランカー金副将が勝ち越しトライを挙げた。8―3。以後は守勢時も粘りに粘り、最後の笛が鳴るまで自陣ゴールエリアに敵を入れなかった。昨季はよく終盤に逆転負けした早大の後藤禎和監督は、「安心して観ていられました」と繰り返す。 後半25分頃の重要局面で直線的なタックルを決めたフランカー布巻峻介は、「(試合を通しては)僕の理想とは違うプレーをしてしまったんですけど」としながら、こう前を向くのだった。 「あそこはきついところじゃなくて、楽しむところだ、と。ポジティブに攻めるように。そういう気持ちなら、もしトライを取られても『次、次!』という風になると思うんですよね」