「世界の猫を喜ばす」会社は、なぜ日本中の嫌われ者となったのか…いなば食品の炎上が止まらない根本原因
食品メーカー「いなば食品」で新入社員が相次いで入社辞退したことを『週刊文春』が報じ、注目を集めている。神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「今回の問題は、いなば食品の関係者だけでなく、多くの若者に『明日はわが身』という切迫感を抱かせたのではないか。だからこそ、『炎上』も『密告』も終わりが見えないのだろう」という――。 【写真】いなば食品の稲葉敦央社長(中央)=2024年1月18日、静岡市 ■「CIAOちゅ~る」いなば食品は200年の歴史 「いなば食品」の炎上が止まらない。 「週刊文春電子版」の報道をきっかけに、次から次へと悪評がネット上に拡散している。 2016年には300億円だった年商が8年で1700億円にまで拡大したにもかかわらず、今回の騒動で、イメージの悪化を招いた。 ペットフードや、缶詰食品など、いなば食品は消費者に近い。耳に残るCMソング(「ちゅ~る、ちゅ~る、CIAOちゅ~る」)によって、ソフトな印象を与える。今回のニュースが起きるまで、同社が創業1805年で200年以上の歴史を持つとも、本社が静岡県であるとも、多くの人は知らなかったのではないか。 「週刊文春電子版」がスクープした、同社の「由比のシェアハウス」の写真からの衝撃は、あらためて強調するまでもないだろう。ボロボロの古民家の写真は、不潔そのものだった。文春に「女帝」と呼ばれる社長夫人に加えて、「由比のボロ家報道について」というタイトルのプレスリリース(現在はタイトル、内容ともに変更されている)が「怪文書」のようだと話題になった。良いイメージは吹き飛び、悪徳企業の権化のような扱いを受けている。 ■「炎上」が止まらない根本原因 社長だけではなく「女帝」がいかに悪辣か、そんな声や評判も、止まるところを知らない。創業家(稲葉家)が延々と支配するオーナー企業ならではの歪さ、「広告」に頼るばかりで「広報」をおざなりにしてきたツケ、といった、経営面からの失点は、いくらでも挙げられよう。 ただ、だからといって、同社を袋叩きにするだけで、いいのだろうか。 今回のニュースが、同社に入社予定だった新入社員をめぐるものだったからである。同社のみの問題ではなく、他の多くの若者にとって他人事ではない、と感じられているのではないか。だから、ここまで炎上が続いているのではないか。 ヒントは、時を同じくしてNHKが報じた「退職代行」をめぐるニュースにある。