【県産米輸出】欧州での足場強固に(7月22日)
英国への県産米の輸出が数年で倍増する見通しとなった。訪欧した内堀雅雄知事に、現地の業者が明らかにした。本県からの輸出全体に占める欧州向けの割合が極めて低い現状を踏まえれば、出荷促進に向けて大きな弾みになると歓迎できる。今後は、現地の県人会を含めた本県ゆかりの組織などと連携を一層深め、販路の維持・拡大に努めてほしい。 邦人が社長を務める輸入業者「TKトレーディング」が内堀知事に対し、県オリジナル品種「天のつぶ」の取扱量を現在の年間7トン程度から今後3年で15トン以上に引き上げる方針を示した。2023(令和5)年度の県産農産物の欧州向け輸出量は、全体の1・8%に当たる8・5トン。英国向けが8割を占めており、コメが品目の大半だという。本県にとって欧州は未開拓の市場とも言える。今回の動きをEU加盟国への出荷増にもつなげたい。 県によると、オランダは農産物の輸入を受け入れる港湾施設が充実している。国内の流通網も整備されており、県産米を送り出す下地が整っている。イタリアにもコメの食文化がある。両国を含む欧州各国では日本食ブームが続き、すし店やおにぎり店の出店が相次いでいる。天のつぶのような噛[か]み応えのある食感が好まれていると聞く。歴史的な円安で、日本から原材料を購入しやすい環境にある。現状を県産米など農産物の輸出拡大の追い風にすべきだ。
具現化には、輸入業者や販売店、飲食店と絆を強める取り組みが欠かせない。本県とのつなぎ役として期待したいのが、地元の事情に精通した県人会組織だ。英国では「ロンドンしゃくなげ会」の満山喜郎会長(白河市大信出身)らが、風評払拭に向けた取り組みを地道に続けてきた。オランダの「オランダふくしま会」の石川武司会長(伊達市霊山町出身)はかつてオークラ・アムステルダム料理長を務め、飲食業界などに幅広い人脈を持つ。本県出身者が長年にわたって築いたネットワークは、農産物をはじめとした県産品の輸出を広げる上で手堅い基盤となる。 輸入促進を目指す現地での活動を充実させるには、財政面を含めた支援が必要だ。政府を含め、きめ細かな目配りを求めたい。(菅野龍太)