1ミリ角の寄木細工も!神奈川の木工を世界に発信するブランド〈手神(てがみ)〉
コロカルニュース
■ブランド価値を上げ、つくり手に還元したい 木工製品の産地として知られる神奈川県西部。指物(さしもの)・挽物(ひきもの)・寄木(よせぎ)・木象嵌(もくぞうがん)といったさまざまな木の加工技術を持ったつくり手の姿や想いを世界に伝え、神奈川の木工の価値を上げたいと2022年に立ち上がったブランドが〈手神〉です。 【写真で見る】松本育さんが手がける、すべての辺が69.1度で交わる器〈69.1°〉 〈手神〉を手がける〈株式会社ジーンワークス〉は、足柄上郡山北町に拠点を置く木工商品のプロデュース会社。代表の池谷賢(いけやまさる)さんは、製品企画の過程で出会ったつくり手たち自身の魅力に感動したといいます。 「なかには、国内で同じ加工技術を持つ人がいない、まさに日本の宝のような方もいます。しかしその魅力は伝わっておらず、適正な価格で取引されない場合や、後継者不足で年々工房が減っている現状があります。 はじめは5人の作品を仕入れて販売していましたが、それぞれのつくり手を知れば知るほどその人自身の技術と魅力を作品と一緒に伝えたいと思うと同時に、つくり手のおかげで得られた利益をどうにかつくり手や神奈川の木工に還元したいと考えました。」 こうして作品だけでなくつくり手のストーリーも“手紙を書くように心を込めて”紹介し、“つくり手・伝え手、全ての手が神奈川の手であることから”〈手神〉と名づけられたブランドが誕生しました。 ■5人のつくり手とデザイナーとの共同作業 〈手神〉の作品は、池谷さんとデザイナーの山田佳一朗さん、山内美歩さんが何度もつくり手たちの工房に足を運び、技術をどう表現するか、どんな表現をしたいかを話し合いながら、何度もデザインと試作を繰り返して完成させていきました。 寄木と傾斜のある難易度の高い指物細工を得意とする松本育さんの〈69.1°〉は、全ての辺が69.1度で交わる器。直線だけで構成されていますが、実は木を真っ直ぐに切るのは難しく、デザインの段階ではつくることは難しいと松本さんは思っていました。しかし、樹種選びやパーツの合わせ方に手をかけることで、松本さんだからこそつくれる作品ができあがりました。 つくり手同士の協力があることも、〈手神〉の良い部分だという池谷さん。小さいろくろ細工を得意とする乾靖史さんの〈きねんの家〉や、小田原唯一、微細なろくろ細工で豆茶器を製造できる斎藤久夫さんの〈豆茶器〉〈豆けん玉〉には、寄木挽物師・小林じゅんのさんの木を見る力と丁寧な加工技術によって生み出された寄木が取り入れられています。 木工作家として人気の岩宮千尋さんは、木工象嵌や木工ろくろを駆使し、空想的な世界感のアートワークを製作しています。〈手神〉のポップアップ販売では、岩宮さんが小林さん製作の寄木チャームにお客さんのリクエストに答えて焼ごてで絵を描くワークショップもたびたび行っているそうです。