『マルス』道枝駿佑を絶望から救った“仲間たち” 脚本・武藤将吾が描く“切り札”とは
國見(江口洋介)率いるクロッキー社がサイバーテロを仕掛けた『マルス-ゼロの革命-』(テレビ朝日系)第7話。 【写真】『マルス』第7話場面カット(複数あり) 桜明学園一帯のスマホが使えなくなる緊急事態に見舞われたが、クロッキーのアプリをダウンロードした者だけにその現象が見られていた。“ゼロ”こと美島零(道枝駿佑)は、真っ先に國見の関与を疑う。このテロが、國見が国内最大手の総合流通企業・エンダーグループの会長・西城澪子(原田美枝子)に話していた「平和ボケに浸かった日本国民の目を覚ませるため窮地に追いやらせる」ということなのだろう。 クレジットカード機能も搭載され、身分証代わりにもなるクロッキーは国民の個人情報を一手に掌握しており、國見の鶴の一声でスマホの利用を止めたりクレジットカードや身分証の機能を無効にするのも容易いことだ。恐ろしすぎる。 何とか國見の陰謀を阻止しようとゼロは西城会長に近づくも、サイバーテロを仕掛けたのがクロッキー社という証拠がないと一蹴されてしまう。 そこで、クロッキーの本社に忍び込んでクロッキーの新機能に仕組まれたウィルスについてのデータを奪うことを思いつく。しかし、元祖・“マルス”メンバーだった倉科エリ(大峰ユリホ)の身に起きた悲劇や、球児(泉澤祐希)の不慮の事故による死亡も重なり、ゼロは動画集団“マルス”のメンバーを巻き込むまいと一方的に解散を言い渡す。 不法侵入などの犯罪にも問われるこの危険な闘い。それを自分一人で続けようとして“アイコン”こと逢沢渾一(板垣李光人)のこともあえて突き放し、心を鬼にして「利用価値もない」「邪魔なんだ」などと思ってもないことを言うしかないゼロも切ない。 しかし、そんなゼロの心を溶かしたのは、やはりマルスの仲間たちだ。さすがのゼロもセキュリティ万全なクロッキー社に一人で乗り込むのは無理難題で心折れかけていたところに、彼らが駆けつける。 アイコンの「自分にとって何が正しいのか、何を信じたいのかが大切」で「たとえ世の中的に間違ったことだとしても僕は大勢の人を救おうとしているゼロくんを信じたい」という言葉にゼロが珍しく涙ぐんでいた。どんなにカリスマ性に溢れる人も、一人でできることはたかだか知れていて、やはり志を共にする“信じてくれる”仲間の存在は大きい支えになるのだろう。 真実を配信してもその度にクロッキー社に握り潰されるということを繰り返しているゼロからすれば、そんなこと慣れっこなはず。でも、だからこそせめて近くにいる仲間だけには信じていてほしいという気持ちがきっとどこかにあるのではないだろうか。 何とか無事にデータを盗み出し、仲間と一緒に逃げ切った後に飲んだ一杯の水を「うまい。ありがとう」と噛み締めるゼロの表情が柔らかい。一度仲間や居場所を失ったことがあるからこそ、エリがかつて言っていた「仲間と飲む水は格別」が今沁みるのだろう。 無事データを盗み出せたものの、これも実は國見の思惑通りで、データは表示されずウィルスに関する情報の入手に失敗。そればかりでなく身分証が発行できなくなったり銀行のカードが使えなくなった時刻とゼロたちが本社に潜入した時間が一致。このシステムエラーの原因をゼロ率いるマルスのせいだとし、反対にサイバーテロの実行犯に仕立て上げられてしまった。 クロッキーという巨大企業を相手に高校生が楯突くなんてやはり無理だと思われたが、ここでゼロは“高校生だからこそ”行使できる最終切札を切った。本作の脚本を務める武藤将吾によるオリジナル作品『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)では教師が生徒を人質に学校に立てこもったが、今度は反対だ。生徒が教師を人質にするようだ。 西城会長も國見もなんだかんだ骨太で自分たちに食らいついてくる“マルス”のことを頼もしそうに眼差しているようにも思えるが、いったい國見が口にした「巨大プロジェクト・ゼウス」とはどんな構想なのだろうか。そしてゼロが西城に渡した木箱の中身は一体何なのだろうか。
佳香(かこ)